第24話 元社畜は交渉事に命を懸ける

【なんでせっかくもどったのにおじいちゃんにもどりたいの(# ゚Д゚)】


 僕を若返らせてくれた(本人の意思に関わらず)ダンジョンは、僕が元に戻りたいと言うのがお気に召さないみたいですね。それともこんな何にも出来そうにない中学生なんかに戻らされて喜ぶやつがいるとでも思っているのかな?それから50代は、中年しくは熟年であって決して老年ではない!と強く主張したい。


 なおも僕が憮然とした表情で黙っていると、ダンジョンの方が何やらあわてた様子で僕を懐柔しようとしてくる。


【だまってやっちゃったことはわるかったかなぁっておもったんだよ?でもおこらなくてもいいでしょ?

 そーだ♬なんかおまけをしてあげるよ♡】

「おまけしてくれるのでしたらとしを元に戻してくれるついでに魔力とか腕力とか上げてもらえませんかね」

【・・・】


 僕の返答にダンジョンは沈黙を以て答えてきたね。

 やっぱり無理筋の要求だったのかな?


「じゃあ称号はいらないから元の齢に戻してくれませんかね?」

【・・・】

「だったらグリフォンは返すから元に戻してくれませんかね?」

【・・・】

「それじゃあ、これからは週に一回ダンジョンに潜るようにするから戻してもらえませんか?」

【・・・やくそくだよ?ちゃんと会いにきてくれる?】

「今日だってちゃんと来たじゃないですか」


 嫌々だという事はえて触れずにいよう。


【ずっとわすれたマネしてたでしょ?】

「・・・」


 しっかりとバレているようですね。こいつは一本取られちゃいました。


【でもやくそくだよ?まもってくれる?】

「善処します」

【~♬】


 どうやら納得して貰えたようで一安心ですね。でもね、善処しますと答えて約束をちゃんと守るとか思っている所が経験値が少ない証拠なんですけどね。


 出来る事なら二度とこんなところに来たくはないんですけどね。


 それはそれとして一つ確認しておかなきゃいけない事があります。


「ところで聞いておきたい事があるんですけどいいです?」

【あたしとヒロちゃんはともだちだからなんだって聞いていいよ♪】


 急にヒロちゃんとか距離感が信じられませんけど・・・って言うよりいつから友達なんでしょうね?でもここで突っ込んだら話がこじれるのは眼に見えてますからスルーしておきませんと。


「称号って何か効果とかあるんですかね?」

【えーっしらないの?いろいろあるのにしらなかったの?】


 公表されてないのに知る訳無いじゃないですか。


「調べる方法が解らなくて僕たちは誰も知らないんですよ」

【じぶんでしらべないとなんにもわからないでしょ?ひとがやってくれるのまっててもダメだよ~(# ゚Д゚)】


 研究する気も無かったとはいえそう言われれば言い返す言葉も無いわけで・・・


「いやはや面目無いですね。そう言われてしまうと答えようが無いじゃないですか。

 ただ切っ掛けも無しに検証する事もできませんからね・・・ヒントとかいただけないでしょうか?」

【しょーがないなー♪

 じゃ、一つだけおしえてあげるね♬

 『初めての探索者』はきねんにもらえるけいけんちが2ばいでレベルがあがるときのきんりょくとちりょくのもらえるりょうが2ばいなんだよ♡】


 レベル?ゲームじゃあるまいしそんなものがこの世に存在するとは思わなかったんですけど?


「レベルと言われましても今までそんな話は世間に広まっていませんでしたけど?」

【たんさくしゃカードをつくったときにわかってくれなかったからおしえなかったんだもん】


 探索者カードって僕の持ってるA000001の紙のやつですよね?とある機関が門外不出の技術で作っているって聞いたんですけど?それをダンジョンが作ったけど理解できなくて教えなかったって意味不明なんですけど?


「誰もレベルなんて解らないでしょ?」

【おしえてあげるっていったのにめんどうだからいいっていわれたんだもん(# ゚Д゚)】


 そう、鑑定スキルを持つ人間をもってしてもレベルなんて代物はこれまで明らかにされてこなかった。新規登録の際にコピー機のような機械に両手をかざして読み取った時の出てくる数値が其々それぞれの能力だとされているだけだ。その数値はベテランになっても初心者の頃と変化が無い事から基礎値と呼ばれている。

 その数値は、実際の握力や背筋力などと比べて相関性は認められるものの規格の値がkgとかcmとかで表現されている訳でも無く、さながらゲームのパラメーターのようでありそれから転じて探索者の事を通称パラと呼ぶようになっているんです。


 話が逸れたけど、基礎値は解っても現在の能力値とかレベルとか客観的にありそうな感じはするけど把握できていないのが現状なんですよね。


 ちなみに僕の探索者カードに記載されているのはこれだけです。


 氏名 雅楽 太智 《うたい ひろのり》

 生年月日 19XX年 6月 24日

 住所 XX県 XX市 XX町 XXーXX 保路井アパート202号

 血液型 A


 称号 初めての探索者


 体力  12

 魔力   8

 

 筋力  10

 知力  11

 敏捷   9

 防御   7

 運    4


 スキル  なし

 職業   なし



 見事にレベルの表示なんて無いしスキルも職業も無しのザ・雑魚!としか言いようがない情けなさですよ。

 全ての値が一般人では10が平均、捜索者だと12あれば人並みと言った所で敏捷9防御7運4(!)が人並では無い事を物語っているな。筋力知力が一般人平均程度なだけで後がズタボロでしたよ。


 筋力が高ければ接近戦で力を示せる戦士や騎士、知力が高ければ魔法に長ける魔術士か回復士、敏捷が高ければ機敏さや器用さを活かした斥候や鍵士、防御が高ければ守りに定評のある衛士や騎士の職業が生えているものなのにすべてが中途半端な無職とか全くもって探索者らしくも無い。

 只々『初めての探索者』の称号があるだけの一般人。死ぬのを前提だったら魔術師でもやってみる?これが僕に対する評価であり常識なんです。


 ゆえあってダンジョンに潜らざるを得なくなった時に発覚したその事実が僕をポーターへと仕向けたって事なんです。これがレベルという概念の無い世界での現実だったんです。


「このカードに載っているパラってレベルいくつの時なんだろうね」

【探索者になったあとだからスライムふんだあとだよね?だったらレベル3のときのだよ】


 ・・・レベル3でこんなに低いの?そう言えばスライムを踏む前は虚弱体質でよく寝込んでいましたね。それにしても元の数値って一体いくらなんでしょうね?ところで今はどうなってるんですかね?


「スライム1匹でレベル3なんですね・・・でもその後僕は一切モンスター殺していないんですけどもうちょっとぐらい良くなっているんですかね?」

【いじめっこにひっぱられてきてたでしょ?

 あのときにけいけんちのぶんぱい?ってのがあったからいまは18かな?】


 え・・・?それじゃ体力12魔力8じゃないの?それより経験値の分配って?戦闘に関与していないポーターにも恩恵があったんですか?


「経験値ってのは倒した者に与えられるものじゃないんですか?」

【なかまとたおしたらなかまにもわけられるんだよ♡

 とどめをさしたらはんぶんもらえてそれまでにこうげきしてたらのこりのうちのはんぶんをこうげきしてたのできんとうでわってのこりはこうげきしてないのがきんとうわりってきいてるけど?】


 という事は5人のチームでとどめを刺したら50%、他に攻撃に参加したのが2人だったら一人当り12.5%、残りが回復役とポーターとしてそれぞれ12.5%の経験値が貰える計算ですね。だとしたらあの時の主火力の戦士チンピラは今も現役だったらレベル100ぐらい行ってるんじゃないですか?


 とにかくGを追いかけるグリフォンを呼び寄せよう。あれからまた大きくなって秋田犬くらいの大きさになってますからね。足の大きさでどれくらい大きくなるかは判るって聞いた事がありますけど、コイツのでっかい足を見てるとほっといたらすぐにでもここをボス部屋に変えるかも知れませんよ。

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