第17話 わがまま娘は木乃伊の夢を見るか?
「
火曜、髪のセットに納得がいかず何度もやり直してる内に結局出社が午後になってしまった
一部上場とはいえ、彼女の勤める会社は中途退社の率が極めて高い事で有名な会社ではあった。しかし、教育係を務めていた男はそんな会社に30年以上勤務する有能かつ勤勉な事で有名な人物だった。有能であるが故に昇進させて実務が
貧相な見た目でかなり損をしているとは思っていたが、今更ながらに実態を思い知らされる彩であった。
そして確認の為に教育係がいる筈だったのを目当てに覗いた部署は、自称敏腕部長と自称エリートが枕を並べて討ち死にしていた。正確には
もちろん彩はすぐさま部外者を
「お父様、わたくしの教育係でしたセンセ、じゃなくて
「彩、
公私のけじめが出来ていない親娘であった。
「そのセンセが辞表をお出しになったと聞いて確認に来たのですわ!わたくしに無断で辞めるなんてありえませんわ!」
「・・・そんな話は聞いていないけど?
・・・
『そ、それが社長!昨日出されてました!』
「なんで止めないのよ、
『そうは言われましても本人からは郵送で関原からはビリビリに破いたのをテープで繋いで提出されてしまいましてもう人目についてしまってて誤魔化しようが無くてですね』
「彼の力なくして我が社はあり得ないのよ?会社潰れたら誰が責任取るのよ!」
彩は、ここでようやく自分に付けられていた
「関原部長も
そんな高評価の人間を雑に扱い過ぎておかしいと思う人間はいなかったのか?
「関原はウチの重要な取引先の自動車メーカーの社長の血筋だよ。俗に言うコネ社員ってヤツだね」
「あっちに返品するとかはできないのですの?」
「いくら不良品だからって解っててもそう簡単にウチの株式の二割を握ってる会社と事を荒立てるなんてできないよ」
人間を返品する事は出来ないが人材として扱われていないが為の発言である。それに先方も無能だと知ってて押し付けているので引き取る気も無いであろう。ちなみに先方の株も一割程度は持っているので一方的に無理を押し付けられる
「役に立つ可能性の無い方に無駄にお金を掛ける位ならセンセを取締役に
「本人が現場が好きだって言ってたからねぇ、それに今まで他所に引き抜かれるような事は無かったからね」
現場が好きで離れたくないだとか偉くなりたくないだとか本人が言った事は一度も無い。それに今まで引き抜かれなかったのは忙しさにかまけて他社の話を聞くチャンスが無かった事と自己評価が低すぎて本人が勝手に諦めていただけの事である。
「退職したのでしたら他所もウチに遠慮なんてしなくなるのですわ」
「きっとそれはダイジョブじゃないかな?愛社精神に
「でもご本人にお聞きしましたけど給料は私の半分ほどでしたわ」
「だからそこは愛社精神がだね」
金も出さず精神論で縛り付けて平気なこの会社は漆黒のブラック企業である。
「つまりは雅楽様の善意に
「彩、いやサヤカちゃん!ウチと雅楽君の仲ってのはそんなに薄っぺらい信頼関係じゃないんだよ?」
「聞いた話ですと関原部長はセンセの忌引きや入院などを全部無断欠勤扱いにしていたそうですわ」
はっきり言って労基署に駆け込まれたら白旗確定の事案である。
「でもでもアンポンタンの関原には持ち株二割がバックに付いてるんだよ?」
「だからと言って、センセは自分の持ち分の他に関原部長の為に営業を
自分が散々困らせている事を棚に上げて他人を攻めるのが上手なお嬢様だった。
この後1時間以上も彩の直談判は続いたが関原や酒匂の更迭や断罪も給料を倍以上に上げてでも雅楽を再び迎え入れるような事も何一つ決まる事は無く、憤慨した彩は定時よりもかなり早く退社したがそれに関して悪びれる様子も無かったという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます