第7話 社畜は返事に困っている

 僕をゴブリンのミイラ呼ばわりしたツルッパゲで大柄の不心得者は、風間様のチームメイトでタンク役らしい。他にはどんくさそうな女の子とショートヘアで活発そうな金髪女にゴリラが仮装したのかと見間違うほどの大女、そして風間様。これが『栄光の片翼』のフルメンバーだそうです。役割としてはハゲが盾、風間様が剣士で前衛、金髪女が斥候兼弓使いで中衛、どんくさ娘が攻撃術師でゴリラ女が回復役兼ポーターで後衛になるんだとか。・・・あのガタイでヒーラー兼ポーターって何か間違ってる気がしますね・・・


「ヤマト!そんな言い方したら失礼になるって何べん言ったら解るの?謝りなさい!」

「麗奈さん、だってアイツ兄貴が話しかけてるのに無視してるんすよ?」


 どうやらハゲはヤマトと呼ばれているらしい。そしてそれをたしなめてたのは麗奈さんゴリラ女・・・見た目と違って脳筋では無いようですね。で、兄貴って風間様?僕話し掛けられてましたっけ?


「ヤマト、静かにしな。済まねぇな、おっさん。

 ついつい根掘り葉掘り聞いちまってさ・・・都合が悪けりゃ黙ってても文句は言わねぇって。興味はそそられっけどさ、それでどうこうするつもりはねぇからさ。

 ただ、個人情報保護をしなきゃならねぇ筈のあいつら職員が眼の色変えて騒いでたから気になっただけだからさ、気にしねぇでくれ」


 口は荒いが気性のさっぱりした青年ですね、風間様は。

 それにして僕はまたやってしまってたのか。実は、会社で自分のしでかした事まで僕になすり付けてミスをあげつらう周りの連中に抵抗する為か一切話を聞かなくなる特技を身に着けてしまっててどうやらすごい剣幕で職員をやり合う風間様に反応してそいつが起動してたみたいなんです。


 結果として何を言われても生返事しかしないでくの坊が出来上がるという訳です。それが原因で評価がまた一つ下がっていく負のスパイラルの完成って訳ですけどね。

 そりゃハゲヤマトが凄んで来ても仕方ないですよね。


 取りあえずその場は風間様に頭を下げて誤魔化し少しでもダンジョンに入ろうと移動しようとしたら事務のおっさんに呼び止められる。


「すいません雅楽うたい様、このカードだけでは入場できません」

「それは僕が30年入ってなかったからですか?期限が切ってある免許じゃない筈ですが?」


 実際運転免許も持たない僕は、これで全てを突破してきているので今更そんな事言われても困ります。ホンのすぐそこにあるダンジョンにちょっと顔出しをするだけでいいのにこんな事で義理を果たさないとまたうなされるに決まってるじゃないですか!

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