第12話

そしてまたまた自室に戻る。


フェリシア×。元部下。


部下の名前は加川美奈子。私は美奈子と呼び捨てにしていた。


美奈子はかわいい顔をしていて、営業先では男性相手にめちゃくちゃ媚びていた。若さを生かした営業はどうだろうと思っていたが、負けないくらいの知識も身に付けていたので問題ないと判断した。


あの媚びを自分に向けられるとあんなに寒気がするとは――やはり私の心は女なのだろう。


だが夫には効果てきめんなのだろう。普通の男性ならば美奈子……もといフェリシアに堕ちるのだ。


そう考えると夫だけが悪いわけでない気がしてきた…いや、待てよ!そもそもそこは我慢すれば良いだけだ!危ない、危ない、元夫にほだされるところだった。


だがあれだけ先輩、先輩と言って私を慕っていた美奈子がなぜ夫を寝取ったのだろう。それだけがいまだに謎だ。

だがあの様子だと前世の記憶はないようだ。となると永遠に謎は解けないまま。


(どうして私だけが前世の記憶に悩まされるのかしら?)


知らなければ、記憶がなければ普通に女性を愛せたのかもしれない。胸の大きい子が良いとか、うなじのきれいな子が良いとか言えたのかもしれない。


だけど心は女だ。フェリシアに胸を押し付けられたが、息子はいつも通りだった。

むしろ恐怖が先に立って、縮こまってしまった。


(男の体は繊細ね……)


フェリシアも無理となると、残るはジュリアーナ。

こうなると私が選ぶのはジュリアーナ一択となる。


だがまったく全然だれか分からないけど、前世の関係者……のはずだ。私の勘が言っている!

でも誰なんだろう。美奈子の彼氏?それとも元夫の美奈子以外の愛人?それともまさか私を撥ねた運転手?


(明日話せば分かるかな?)


それでも少しすっきりした。私はゆっくりと眠りについた。

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