第11話
今日の相手はフェリシアだ。
そして宰相は部屋を変える気はないようだ。
今回は『やはり若い方が良いですかな?』と下卑た笑みと共に消えていった。
部屋にやってきたフェリシアは、ふわふわっとしたかわいらしいピンク色のドレスを着ている。
ドレスはかわいいのに胸を強調するように、前がぱっかり開いてる。
(なんで胸ばかり見せるのかしら……)
低い身長を利用して上目遣いでこちらを見て、小動物のように瞳をウルウルとさせている。おっとりした感じの表情は男性の庇護欲をそそるのだろう。私にはあざとい女としか見えないが。
「どうぞおかけください」
余所行きの笑みを張り付けながら促すと、胸をギュッと両腕で挟んで強調し、ぴょこんと座って見せた。
(あ……嫌いなタイプだわ)
男受けを狙っている感じがビンビンする。
それ、かわいいと思っている角度でしょ?と言いたくなるように首を傾げて大きな瞳でこちらを見ている。
根っからの男だったら堕ちているんだろうか?でも相変わらず私の相棒は反応しない。
「昨日はみっともない姿を晒してしまい……恥ずかしいですぅ」
消え入るような声。更に頬を染めてからの、上目遣い!決まったね!自分的には100点満点でしょ!
だが無理だ!だってそれは女に受けが悪いポーズだよ!嫌われる女№1だよ!
(ムカつくわ~)と思っているけど顔には出さず、昨日と同じように会話をしよう。確かフェリシアの趣味は……。
「ダンスが得意と伺っております」
「あ……はい、そうなんですぅ。わたくしの唯一の趣味で……」
その小さな『ぅ』はなんだ!って突っ込みたい!ああ、イラっとする。女の血がたぎる!
「わたくしは見ての通り背が小さいから、ルーラント様とはバランスが悪いでしょうか……フェリ悲しいなぁ。グスン……」
グスンってなんだ!あとその嘘泣きポーズやめろ!うざい!!
「確かにバランスは大事ですね。並んだ時の見栄えも大事ですし」
無理って言いたい!だけど最後のひとりが元部下だったら嫌だし、悩むところだけど……。いや、でもどうなんだ?こんな相手を抱ける自信がないぞ?
「そんな――悲しいこと言わないでください!わたくし、ルーラント様の為に身長伸ばしますから!」
「今更身長は伸びないんじゃないかな?」
「愛の力で伸ばして見せます!」
むんってポーズが更に引くんだけど……いや、本当にうざいわ……。
心折れそう~って思っていると、フェリシアが突然立ち上がった。
トコトコトコと歩いてきて、私の横に来てからの〜、腕にぎゅっとしがみき攻撃!
胸を腕に当てるところがまたあざとい。
(でもあれね。思ったより温かくて柔らかいのね?)
「フェリはずっとルーラント様にあこがれていたんですぅ。だからそんな悲しい事言わないでくださいぃ」
すっごいしがみついてくる。思ったより力があるな!
「フェリシア嬢、あなたにとって善き国とはどんな国ですか?」
離れようと声をかけるが、ずいずいと寄ってくる。積極的な女は怖いな!
「わたくしが考える善き国とは笑顔が絶えぬ国です!」
キャハっじゃないよ!ウザ女!
「それはまた難しい事ですね。誰もが笑顔ではいられない――って離れてください!」
「フェリは離れません!難しいことを目指すのって楽しいじゃないですか!目標は高い方が良いんです!」
「それは…………」
決して悪いことではない。むしろ良い事だろう。
そしてこの前向きさと、このスキンシップの仕方!
あんた私の部下だね!夫の浮気相手!
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