第10話

私は自室に戻ってメモを取る。


アンネマリーは×。元夫。


家事も完璧で優しい夫は毎日のように私を求めていた。

若いころならいざ知らず、ミドルと呼ばれる年になってもそれは変わらなかった。


(そう言えば浮気された時には仕事が忙しくて、ずっと相手をしてなかったわね……)


嫌なことを思い出して頭をフルフルと振る。

仕事が忙しいときには彼も遠慮してくれた。それは若いころから変わらない。

だからと言って手近ですまそうとは何事だ!性欲発散したければ自慰行為でもすれば良い!それで足りなければ風俗にでも行け!それだったらまだ許せた。寂しい思いをさせてごめんね、と言ってあげられたのに。


いやいや、どちらにしろ浮気には変わらない。

浮気は罪です!つまりアンネマリーはなし!

あれと結婚して、たぶんナニをされても相棒は本領発揮しないだろう。


(そもそもあのドレスがないわ~)


男を誘うドレス……そう言えば夫もナイトドレスを着て欲しいと懇願していた。全力で断ったけど。


(ああいうのが好きだったわけね…………へぇ~)


今更知ったところで意味はない。そもそも前世の私に胸はない。いや、女である以上少しはあったけど、寄せて寄せて頑張ってAカップだった。


むなしいことを思い出してしまった。


「結婚相手の条件に胸のサイズを付け加えれば良かった……」


そうすれば劣等感に悩まされなかったのに……。


今更言っても仕方ないことに、私は深くため息をついた。

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