第7話

ガーデンパーティ会場から離れ、私は三人を連れて庭園にあるガボゼへと来た。


白を基調としたガボゼには香り高い紅茶と、ケーキスタンドが用意されている。私が座ると右隣をアンネマリーが当然のように座り、左隣にはフェリシアが譲るまいと勢いよく座る。ジュリアーナは私の真正面にかけ、勝ち組のように微笑んだ。


それぞれの後ろには彼女達の侍従とメイドたちが牽制しあうように立っている。


(この雰囲気苦手だわ……)


果たして特異な人がいるのだろうか。まるで獲物を狙うような女性達。目はギラギラしお互いのあら捜しするようにじろじろ見ている。


前世で何度か付き合いでクラブやキャバクラに行った。その女性たちにそっくりだ!あの時の私は女だったから良かったけど今は男。そして彼女達の獲物は私!最悪だ。


(しかも誰が誰か分からない!)


そう、直感的に元夫と元夫の浮気相手がいると分かった。この三人はすべて前世で関わりのあった存在だと。でもどれが夫か分からないのだ。ちなみに元部下で夫を寝取った子も分からない!その二人だけは選びたくないのに!


その時、始まりのゴングの音が響いた。


(ん??)


「まぁ、フェリシア様の夕焼けの様な美しい髪に見惚れてしまいますわ。とてもかわいらしいお方ね。あたくしのことを姉と思ってくださっても良いのよ。こんなにお若い方を寄こすなんて、お可哀そうだわ」


先にけん制してきたのはアンネマリーだ。


(えっと、訳すと……太陽が沈む西側に位置するあなたは、その国力も落ちていくだけだから引っ込んでなさいと言いたいのね。しかも年下が出しゃばってやってんくるんじゃないよって言いたいわけね)


確かに最近シニストラ王国は国策が上手くいかず失敗続きだ。

更に私の年齢は23歳。フェリシアは19歳。年齢は問題ないが、フェリシアはとても幼く見える。私の隣に立つのがふさわしくないと揶揄してるわけだ。


「わたくしのお姉さまになってくださるの?ですがアンネマリー様はわたくしの兄よりも年上だもの。お姉さまだなんて言いにくいわ。ですが、その夜のように美しい髪色の秘訣を教えて欲しいですわ。星の瞬きすらございませんものね」


おお、かわいい顔してフェリシアも受けてきた。


(年増が出しゃばってんじゃねーよ!って言いたいのね。しかも東側にあるデクステラ王国は夜になるのが早い。国力が衰えてお先真っ暗なのはそちらだろ?って言い返したのね。この子も怖いわ)


アンネマリーの年は24歳で私より1つ上だ。世継ぎを残すという観点でいけば、年下が良いに決まっている。現在では女性蔑視発言だけど、この世界では通じる話だ。だからなぜアンネマリーがやってきたのか不思議だった。


(う~ん、それにしても怖いわ~。前世では共学で女性同士で仲良くやっていたから、こんな泥沼はテレビの中の出来事で、実際に見たことなかったから……)


牽制しあうふたりの間でジュリアーナだけが優雅な手つきで紅茶を嗜んでいる。

その手つきが止まり、私を見てふわりと微笑んだ。


(あら……この子はまともかしら?)


「小さい国の方々は心も狭くて嫌になりますわね?」


おっと、直球!確かにマルゴー王国はこの大陸で2番目に大きいけどさ!


アンネマリーとフェリシアがキッと睨んでもジュリアーナはどこ吹く風の風情だ。


(最悪……)


私は3人の嫌味の応酬に心を閉ざして、お菓子をつまむことに専念した。

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