第6話

表情には出さないよう余所行きの笑みを張り付かせ、私は優雅にお辞儀をしてみせる。

大国の王子として、当然のように身につけた技だ。


「初めまして、ルーラント・ケントルムです」


「お会いできて光栄です。アンネマリー・デクステラと申します」


優雅なカテーシーを見せ、笑みを浮かべるのはデクステラ国の第二王女。


シャンプーのCMのようなサラサラした濃い紫色の髪。

鋭く妖艶な瞳の色は、宵闇のような濃い青色だ。

男を誘う赤い口紅が良く似合っている。

スラっと高い身長に似合いの黒いスレンダーなドレスには宝石が散りばめられ、太ももから見せつけるように入ったスリットから、白くて細い足が色気たっぷりに見えている。しかも細い割には胸がバイーンと大きい。


(お色気担当ね。って言うか色々出し過ぎじゃない?)


「お目にかかれて光栄です。フェリシア・シニストラと申します」


言葉に続いて美しいカテーシーをするのはシニストラ国の第三王女。


綿菓子の様な、ふわふわしたピンクゴールドの髪。大きな緑色の瞳は、鮮やかな新緑の色でキラキラ輝いている。


さくらんぼのような唇は、ぷっくりとしていてかわいらしい。

ピンクベージュのふわふわしたドレスがよく似合う。身長が低い割に胸はボイ〜ンと大きい。


(かわいい系ね。なんか視線があざといわね)


「拝謁する機会を頂き光栄でございます。ジュリアナ・マルゴーと申します」


すっと背筋を伸ばし、ゆったりとカテーシーをするのはマルゴー王国の元公爵令嬢。彼女だけは王族ではない。だけど現王の弟の子供だから王族に近しいと言っても過言ではない。


慈愛がこもった紫色の瞳が潤んで光る。神秘的な銀色の髪は光を照り返して美しい。

他のふたりと違って肌の露出が少ないのは、幸いだ。だがそれでも抑えきれない胸がポンポンと大山を作っている。


(ふたりに比べれば地味かしら?でも美しいわね)


さて、これでお見合い相手が出そろった。

周りの視線も痛いぞ~、皆は私がどれを選ぶか賭けをしているようだ。我が臣下たちは呑気だな!こちとら内心はバクバクもんなのに!


これ以上じろじろ見られるのはごめんだ。私は場所を移すことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る