第5話
だが世の中というのは思い通りにいかなものだ。
人は死ぬと分かっているのに、日々生きているときには気が付かない。
自分だって、いきなり死んでしまったにも関わずだ。
ある日訃報がもたらされた。
王太子である第一王子が外交に向かう途中、馬車の事故で亡くなったのだ。
調べたが事件性はなかった。ただ運が悪かった。それだけだ。
そして第二王子の兄上が王太子として立った。
幸いなことに長兄の補佐をしていたので、すんなりと…いうわけではないが、それなりにうまくやれている。
だけど残念ながら、そこで良かった、良かったとはいかなかった。
なぜなら亡くなった兄に子供はいない。王太子として立った兄上に妻はいるが、子はいない。
そこで白羽の矢が立ったのが私。第三王子ルーラント・ケントルム。
逃れるすべを探したが、不幸なことに父には妹がふたりいるだけだ。女性に王位継承権はない。しかもひとりは自国の有力貴族に嫁いでいて、男の子はない。もうひとりは他国に嫁いでいて、男の子は一人だけなので養子にできなかった。
両親や兄、更に大臣たちの説得と言う名の脅迫が毎日続き、私は結婚することになった。
ぶっちゃけ最悪だと思ってる。子作りなんてできるのか?と今だって思っているが、これも仕事だと割り切ることにした。
十二分な恩恵は受けているし、いつの間にか私もこの国を愛していたからだ。
幸いなのは結婚相手の選択権はこちらにあったことだ。
私が住む大陸は、アフリカ大陸の様な形をしていて、その中心の広大な土地がケントルム王国。
北にデクステラ王国、シニストラ王国の2国。南側にマルゴー王国がある。
国力としては我がケントルム王国が強く、次にマルゴー王国、デクストラ王国とシニストラ王国は同じくらいだ。
ケントルム王国は他の3国よりも土地が広く、実りも豊かで、兵力の差も大きい。そういう意味では転生先としては大当たりだ。
故に我が国以外の王族はこぞって娘たちを嫁がせたがる。亡き兄の妻は現マルゴー王の娘だった。その為、次男の兄は国内の有力者から嫁を取った。それぞれの好みにぴったりな相手を。
亡くなった兄が他国の妻だったため、私は他国から差し出される女性を妻としなければいけない。
好みなんてない。だがこれも国のため、王族の務めとして、選ぶしかない。
ああ、夜のことを考えるだけで憂鬱だ。
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