花火のあとに見たもの(不思議な体験)

久石あまね

僕の不思議な体験

 僕の住んでいる街では、毎年、夏になると夏祭りをする。規模は小さいがそれなりに店が出る。フランクフルト、タコセン、たこ焼き、ソースせんべい、コイン落とし、ストラックアウト、おでん。


 その日はお盆前だが、なぜかそんなに暑くない日だった。

 日が沈む気配はなく、夏祭りは夕方から始まった。

 僕は当時、小学二年生で五歳年の離れた中学一年の兄と、兄の同級生の立花君と一緒に夏祭りに行くことになった。

 僕の住んでいる街の夏祭りには名物があった。

 それはストラックアウトだ。

 ストラックアウトとは的に向かってボールを投げる、野球のピッチングを模したものだ。兄と立花君は野球部に入っていたのでストラックアウトが上手かった。このストラックアウトでは景品に花火がもらえる。多くの子どもたちはこの景品の花火を目当てにしていた。

 兄と立花君の投げたボールは見事的に命中し、景品であるたくさんの花火をもらえた。

 

 その後、僕たちは屋台のたこ焼きやフランクフルトなどを食べた。

 

 そして夜になった。セミたちは鳴き止み、夏祭りもだんだん人が減り終了した。


 僕たちはストラックアウトでもらった景品の花火をすることにした。

 兄たちはは毎年、夏祭りの後に花火をしたくてストラックアウトするのだ。

 兄が小学生のときは親たちも一緒に夏祭りの後に花火をしていたが、兄が中学生になったので、もう子どもだけで花火をしていいということになった。

 花火は大盛り上がりだった。僕は花火を持ってふざける兄と立花君がおもしろく笑い転げていた。

 兄が立花君に向かってロケット花火を撃って立花君のTシャツに穴があいたりした。それを見てまた僕は爆笑した。


 ひと通り笑ったあと、ふと空を見たら異変を感じた。

 僕は鳥肌が立つような寒気を感じた。


 空に三十個ぐらいの光の球がぐるぐる弧を描くように飛んでいるのだ。いや飛んでいるのではない、一定の距離をあけ飛行しているのだ。

 僕はUFOだと直感的に思った。

 「お兄ちゃん、アレUFOちゃん?」僕は兄に言った。

 「何言ってん。UFOなんかおらんやん」

 空を見て兄が言った。兄にはUFOが見えていないようだった。

 「じゅんくん、UFOなんか飛んでへんで」

 立花君にもUFOが見えていなかった。


 僕はふたたび空を見上げた。


 闇のような夜空には相変わらず光の球が一定の間隔をあけ、高速で飛行していた。

 

 絶対にUFOだ。


 でもなぜ兄たちには見えていないのか。


 小さい子どもの僕にしか見えないのか。


 そういえばテレビが言っていた。小さい子どもには大人には見えないものが見えるのだと。


 見てはいけないものを見てしまった。


 不気味に感じた僕は花火を置いて、走って家に帰った。

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花火のあとに見たもの(不思議な体験) 久石あまね @amane11

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