第5話  今はハゲよりバスケです

「大丈夫かな」


なんだか薄くなってない?


「大丈夫!大丈夫!」


今日でちょうど10回目。これで僕の借金返済のバイトも終了


「もうひとつあるのを忘れないでよ」


「そうでした」


ぼくはしがない雇われ彼氏


「百合のカップルって何すれば良いのでしょう」


「なにかしたら、あんたの舌噛み切って死んでやる」


僕が死ぬだけでしょ!


「ふふふ」


今日も彼女は絶好調です。




「遠征ですか」


「そうよ」


「ぼくはレギュラーなんだけどお呼びがかかりません。どうしてでしょう」


「あんたはここにのこって後輩の指導をしてほしいの」


「それなら任せて下さい」


「でも」


「あーバイトの件なら大丈夫よ遠征中も付けてあげるわよ


やっぱり僕の雇用主はとっても優しい



「そこもっと走って下さい」

「そこはそうじゃなくてこうですよ」

「そうです、よく出来ました!」

「僕より上手いですよ!ナイスプレイです!」


彼女たちがいない間 僕は一年生を中心に補習を組んだ。

普段怖い先輩に慣れていた彼女たちは、当然怖くない僕のことを舐め切って言うことを聞かなかった。


でも怖いのは嫌なんですよ僕が


そのうち僕のシュートやらドリブルがすごいと数名が騒ぎ出した。


どうです。ぼくはすごいんですよ! 


中学でも選抜に選ばれたんですから

まあ、家庭の事情で部活はやめてしまいました。

今でも生活はかつかつです。


「先輩何ため息ついているんですか」


「いえね。生きるって辛いなって考えてるんすよ」


「いやだ、先輩死なないで下さい!」


そしたら次々女子生徒が僕のとこに駆け寄ってきました。

「何このハーレム状態 僕明日死ぬかもしれない」


「大丈夫です、先輩は私が死なせませんよ」


「ありがとうございます」


「もし死んでも一番高いお線香炊きますね!」


「ああ、うんそうね」


それから僕は少しだけ泣いた


「やだなあ、先輩軽いジョークですってば」


そう自己弁護する後輩の声は届かなかった。 


雇用主さん早く帰ってこないかな



それから3日後


「ただいま」


「おかえりなさーい」


「待て!」


ハイ待ちます


「これはいったいどういうことなのかしら」


彼女はキビキビと動く後輩たちに目を丸くした。


「どうです私の秘密兵器は!」


「秘密兵器って それにわたしって」


「あ、間違えました僕です!」いけないいけない


それから遠征中について聞いたけど何故か彼女は不機嫌そうに、


「つまらなかったわ。あなたがいないんだもの」


「そう言ってもらえて嬉しいです!」


「今日からまた彼氏役頑張りなさい」


「はい、理想の彼氏目指して頑張ります!」


そう言ったら彼女は少しだけ照れたように、


「頑張らなくてもいいわ。普通でいいから」そう答えてその日は帰っていった。


「残念、旅行先でのお話もっと聞きたかったのに」


僕は修学旅行に行った事がありません。だからどんなに楽しいのか想像するしかありません。


「僕もいつか行きたいな」


そんな日が来るように今日もバイト頑張ります。





「今日はバイト休んでもいいわ」


せっかくのお休みです。彼女と二人ウィンドウショッピングでもしようかと朝から張り切って髪をセットしました。


「うーん相変わらずの美少女だな」


自画自賛です。でもぼくは正直者だから嘘はつけません。


「まあ、だからといって男の人とお付き合いできるはずもなく」


「そのヘアスタイルと服も合わせなさい」


そう言われたので、僕のバイト代は最近洋服へと溶かされます。


女子の可愛さは現金で錬成されてる!

最近得た心理ですよ


そんな必要がない男子に生まれたかったな

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