第2話 むかし、悪魔のような女がいた②
翌日僕はスカート姿で登校する
クラスのみんなはぎょっとした目で僕のことを見ていた。 はぁ
この教室とももうすぐお別れです
せめて今日1日くらいは自分のクラスにいよう
うつむきながら【なろう】を読んでいたら、目の前に誰かが立つ気配。
・・・もしやカクヨムからの刺客か
「あ 怪力女」
「ちょと、誰が怪力女よ!」
怪力の自覚がなかったのか
「んじゃ、連行女」
「それもなんかヤダ!」
・・・ちっ、わがままなやつだな
僕は面倒なことが嫌いだった。
「それで小笠原瑠花さん。僕に何の用ですか」
「知ってたの!?」
はい調べました。 色々と
「昨日はごめんね。女の子って気づかなくて酷いことを」
そう言って僕に向かい深々とお辞儀をする。
「あと、酷い扱いしてごめん」
いえいえ良いんですよー 良いですね
ふむふむ、結構でかいなと
「ちょっと!!」
ち、気づかれたか
僕の視線がどこを見ていたのかを
彼女はぱっと上体を起こし、僕から距離を取った。
両手で胸元を隠し、顔を真赤にしながら涙目で僕の事を睨む。
「どこ見てるの!」
「いやー大変ご立派な物をお持ちで、つい」
お互いどことは言わなかった。
そういうお年頃だ。
彼女は僕の胸元をガン見する。いや照れるから。
「まあ、人は自分にないものをもとめるというから」
「オブラートに包めよ!優しさって言葉知ってるよね!」
「勝った」
「ひどい」
もうヤダこいつ嫌い
「あら、でも顔はいいわね」伸ばした手でさっと僕の前髪をかきあげる。
「めがあああ」
「はいはいバルスバルス」
雑すぎて楽しくないんだけど
「ていうかすごく可愛いんだけど! 色も白いし、肌もきめ細かい。あーでもその髪はないわ、自分で切ったの?」
しつれいな女ですね お金くらいあります。
「ちゃんと千円のところです!」自信満々でそう答えたら、微妙な顔された。
え、みんな行くよね、近くて早いしなんといっても安いし!
「安いよねたしかに」
・・・うん貧乏が悪いです。うちはお金がないし。
*
「ちょっと来なさい!」
「いや、ちょっと待って」
もうこれで二度目だよ
その日の放課後、僕は再び彼女に連行された。
「失礼ね。あなたに連絡取れないからでしょ。携帯持ってないの?」
そんな贅沢品持ってないです。ボッチには不要だしw
自分で言ってて悲しくなった。ぐすん
5分ほど流れに身を任せていたら、急に手を離された。
【作法室】
何でこの学校にそんな場所あるの
「そこ座って!」
「はい!」
僕は大きな姿見の前に正座させられた。
鏡は嫌いです
え。ちょっと
彼女はテキパキと持ってきたバックからブラシやスプレー細長い機械やお化粧道具を取り出した・・・まって!まって!
「あのなにを」
「動かないで!」
はい!ごめんなさい!
ギュッと目を閉じる 怖くない 怖くない 鏡はお友達 じゃない
僕は嵐が過ぎるのをじっと耐えた。
時間にして10分過ぎた頃
「よし完成よ!」
目を開けた瞬間殴られませんように
理不尽な暴力に定評がある僕は恐る恐る目を開けた。
「!!!」
「どう?いいでしょ」
「・・・あの誰ですかこの人は」
僕の頭がついていけません。
さっと右手を上げるとそいつは左手を上げます。よし引っかかりませんね。
「なにやってるの?」
気にしないでください。往年の鏡ギャグです。
僕は大きくため息をつくと、鏡の美少女は気持ち悪そうにため息を付きます。
ゆるふわロングというやつですか!
誰ですかこの美少女は!
おでこを出して軽くウエーブがかかったヘアスタイル。
うん可愛い!
自分じゃなければぜひともお近づきになりたいです!
まあこれ以上お近づきになれませんが
僕が鏡を見ながらぼーっとしていたら軽く頭を小突かれた。
「千円にまけとくわ」 やっぱりお金取るんですね。まあお安いですが
あ・・・
「・・・」
僕が無言でうつむいてたら
「・・・え、千円もないとか」
そう言えば買ったんだよ。昨日発売されたBlu-ray版初回特典付きで15800円!
「しょうがない」
許してくれるんですね。優しい
「払えないんならあんたの体で稼ぎなさい。良かったわね、その美貌が役に立つわよ」
僕売られるの!
あの初めてだから最初は好きな人とががいいな なんて
まあそんな人居ないけど
「もし払えるなら、今すぐ正規の定価払ってもらうわよ」
なんと
「でもストレートアイロンでやったから、少しだけおまけしとくわ」
だからおいくらですか。怖いんです。
「カット代にパーマ代、あとお化粧もあれこれ」
そんなに!もはや別人レベルだよ僕
「2万円丁度でいいわ」
あ 終わった
「学割料金よ!感謝しなさい」
「あ・・ありがとうございます」
払えません。
ねえ、いったいどこに売られるの。めちゃ怖いんだけど。
「ふふふ。大丈夫よ。最初は誰でも初めてだからね」
「痛くしないでね」痛いのはもう懲り懲りなんだ
それはどうかなーと恐ろしいことを呟いた横の美女は
「じゃあ早速、今日の帰りから頑張ろうね!」と、極上の笑顔で僕に死刑宣告をした。
ちくしょう、限定品買うんじゃなかった!
通常版にしておけば・・
「大丈夫よ、沢山稼いだら私がボックス勝ってあげるから」
「まじか!」
こいつ良いやつみたい!
人生初のボックス入手に浮かれた僕は
最後まで何の仕事か聞く事はなかった。
僕の~ 初めては~ 推しに捧げるんだ~♪
へんてこな歌を作って 上機嫌だったよ、その時はね
*
「何でこうなった」
眼の前に立つイケメン集団。
「初めては優しい方が良いでしょw」
こいつ悪魔だ
「どれでも好きな人選んでいいよ」
いつかこ◯してやる
「あたしって優しいよね」
・・・はい優しいです。
溢れる涙を抑えきれず僕は適当に指さした
僕の初めての人を 適当に
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