第1話  むかし、悪魔のような女がいた①

「ちょっと、男子はこっちでしょ!はやくそこどきなさい!」


スーツ姿で新入生の列に並んでいると、突然大声とともに物凄く強い力で腕を掴まれた。


なにこの「この人痴漢です!」

みたいなシュチュエーションは!


頭が真っ白になりそうですよ!


僕痴漢なのか!

全然気づかなかったよ。


誰ですか被害者は土下座謝罪させてください。


「・・・だから警察だけはご勘弁を」


「何言ってるの?あんたが並ぶのはそっち!右側の列よ」


その子は僕をずっと睨み付け、掴んだその腕を離さなかった。 


僕は怖くてずっとうつむいたままだった・・ではなく、ここから逃げるチャンスを伺っていた。


でも無理!

この女力強すぎ!


振りほどこうにもびくともしない。

これじゃ逃げられませんね。


今後はその力、満員電車で痴漢撃退に発揮することでしょう。


僕は逃げるのを諦めると、彼女に引っ張られながら歩く。 

あっという間の高校生活でした。


せめて突き出される前に、そのお顔でも見て役立てよう、色々な事に。


僕はゆっくりと顔を上げそいつを見た 頭に衝撃を受けた


そこには物凄い美女がいた 


マロンブラウンの髪をゆるふわ巻きにして、軽く化粧もしている。


どう見ても女子大生です。ちょっとドキドキしてきました。


こんな美女に腕を掴まれるのって、いくらお支払すればいいんでしょう。


僕の預金が続く限り毎日でも指名したいです。まあ口座持ってませんが


「さあ、こっちの列に来なさい。今からだと最後尾の席が空いてるでしょ」


僕は男子の列の後ろにぽいっと投げるように放置された。


「ど、どーも」


男子が後ろを振り返って、あわてて前を向いた。


その態度ひどすぎませんか

ごめんね、気持ち悪い顔で


僕の顔は伸ばしっぱなしの髪で覆われ、その表情は全く見えない。

おまけに瓶底黒縁メガネ。


こんな絵に書いたようなボッチキャラです。

自分で言ってて気持ち悪くなりました。


最後尾の男子生徒の後ろには当然席はなかった。

僕は体育館の冷たい床に体育座りをして過ごした。


スーツで体育座りは辛いです。

少しだけ泣いてもいいですか。

心が折れました。


きっと明日から保健室登校です。


願わくば高校からは普通の教室に出たかったですが、人間諦めが肝心です。


ふふふ、すべてを諦めた僕に死角はないのですよ。



その日帰宅したら机のうえに制服が置かれていた。

明日はこれを来ていくことにしましょう


「あれ、ない」


希望したスラックスはまだ来てなかった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る