第3話 崩壊の真相
慎重に封書を開くと中には数通の
『ルーシー、僕はこれから
だが冒頭から不穏な宣言が書き出されており、カリムは思わず鳥肌を立てた。それでも、亡き父に何があったのかを知るべく意を決して読み進めていった。
『君はもう知っているかもしれないが、先日僕とシーラは『
『
『そのとき僕は、もう何もかも受忍
シーラとはルーシーの姉を指す名であったことから、カリムにとっては実の母に該当した。
シーラ・ドランジアは13年前の一家毒殺事件の時点で行方不明であり、容疑者にも挙げられながら
だが実父が記していたその真相を知るや
『
『だから僕らがラ・クリマスの悪魔と
『悪魔をディヴィルガム以外で討つことなく生け捕りにする任務である以上、その古びた杖を持たぬ者は丸腰同然だった。杖を託された僕とシーラ以外の部隊員は
「こんな無謀なことを何度も繰り返していたら、遅かれ早かれ私達も死んでしまう。ナトラに二度と
『シーラはそのための力を
『僕はその事実とシーラの切なる想いを添えて、
『
『
『だから僕は、ナトラ以外の
『こんな浅はかで
『でもそれが愚かで臆病な義兄の動機であったことを、どうか頭の片隅に覚えていて欲しい。君が伝承の悪魔に
長文は結びに近付くに連れて筆圧が濃くなり、
だがシェパーズが
カリムは
『僕は計画通り、
『ただ1つ
『きっとこれは
終始乱れた筆跡は、そこで終わっていた。
カリムは近くの机に
だがカリムはそれを拾い上げる余力もなく、崩れるように背後のベッドに腰を下ろした。膝元に両肘を立てて
——父は…シェパーズ・ドランジアは、母であるシーラを失い精神的に追い込まれて
——だからといって彼が計画したことに同情すべきでないし、何を誤ったのか意図しない被害を生んだ
——結果的に俺は一命を取り留めたのに、何ら
その一方で、この遺書とも言える記載内容が世間一般に一切
——議長は確実にこの遺書を読んだはずだ。もしかしたら、事件後に関わりがあったピオニー
——でも当時もドランジア
——全部隠して
だがカリムはそこまで考えると、
胸の内の
——議長はソンノム霊園で過去を明かしたとき、内輪の騒動の責任をナスタ―にのみ負わせているかのような物言いだった。それはつまり、議長はシェパーズの弁明に同情していたってことなのか? それでもナスタ―の遺志は継ぎたくて、幼かった俺を遠く知らない場所へ追い
——でもそれならどうして5年前のあのとき、俺と悪魔との間に因縁を生み出すような
——議長は…
**********
ラ・クリマス大陸暦994年5月上旬 カリタス州グリセーオ
「
街の
そんななか数人の男たちが慌ただしく闇の中を
その影は地の利を生かして狼のように
「ここに逃げ込んだはずだが…
「落ち着け、
だが雲の隙間から
壁の上に身を
時刻は間もなく19時を指そうという頃、グリセーオ市街地の北西の
その個室の扉を叩く音がして、緑地のワンピースを
「リオ、19時の点呼の時間よ。カリムは戻っているの?」
その問いかけが
そして長い黒髪で左目を隠す少女のような少年は、ぶっきらぼうに問いかけに答えた。
「俺はちゃんと戻ってるよ、ステラ先生。」
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