第19話 好奇心の終着点
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ドールは音も匂いもない黒い花畑に
だが舞い散る金色の
一度死んで闇の中を
ラ・クリマスの悪魔を宿した他の6人との
——
——でも、やっぱり信じたくなんかない。ここが現世を模している世界なんじゃないかって言われてたし、他の人達もそれを確信したからあんな風に姿を消していったのよ。私だって、同じことが
そうして閉じていた
小さなベッドや机、本棚などが並ぶだけの
イリアの頼みを
自室から出るにはもう一度『転移』しなければならなかったが、ドールは改めてこの世界を見渡すために、一度ディレクタティオを
——少しくらいなら、あの広場を離れていても
——それなら
そう
丘から見渡すディレクタティオの街並みは、白と黒で塗り替えられていること以外は記憶に
だがそこは
ただ1ヶ所だけ、人工的に
ドールはその位置関係から見て、大司教に『立入禁止区域』と断罪された地下空間への入口であると
——あのとき私が
——もし
込み上げる衝動に押されるが
死の
横たわる
その通路は
長い階段を
生前の
そして神聖視されていたはずの遺物が、そこら中を削られて原型を
——
ドールが
だがその壁画は認識していた以上に横長で、その全容と空間の広さを改めて把握すると、アメリアから聞かされた疑惑と重なって
——やっぱりこの壁画は
——あの大きさの十字架を
他方で壁画の向かい側にあったはずの木箱は
黒ずんだ作業台の上には様々な工具が染みのようにこびり付いていたほか、以前は見逃していたであろう
金型には小さな
ドールは少なくとも前者がその形状から、首から下げていたグレーダン教のペンダントと
そして突き当りにある大きな机——目の前に額縁が立て掛けられた、生前の
黒一面の机上は当時よりも片付いているように見えたが、そのうえで並べられていた書類に恐る恐る目を通した。
それは様々な素材の使用量や製品の生産量などを
日付は大陸暦999年の5月末日で止まっており、ドールが厄災を引き起こす前日までこの場所が使われていたことが
——これだ。十字架は毎日少しずつ削られて、ペンダントのような装飾品に加工されて教団の資金源になっていた。きっと100年前から毎日少しずつ…それで十字架は7つのうち、もうあの1つしか残っていないんだわ。
その記録の隣には別の走り書きしたような用紙が重なっており、模倣するように素材の配合比率が何種類かに
だがいずれも十字架素材の比重が格段に大きくなっており、混同されている素材も
——6月って…大聖堂が焼け落ちた後にもこの空間で何かが作られていたってこと? 教団の関係者が
そして更に隣には、ラ・クリマス大陸の地図が広げられていた。地図上には5つの×印と、そのうち4つには日付が付されていた。
6月1日にディレクタティオ、同月11日にメンシス、18日にセントラム、25日にグリセーオ、そしてグラティア州の首都ヴィルトス付近の×印のみ日付がなかった。
——1日は私が厄災を引き起こした日だったはず。他の街も、同じように悪魔を宿した人たちの居住地が
「見つけたぞ、グレーダン教徒の女。」
突然背後からぶっきらぼうな声をかけられ、ドールは背中を射抜かれたかのように硬直し、思わず口元を両手で
またもやこの場所で不意打ちを仕掛けられたのかと思うと一瞬気が遠くなりかけたが、その声音には聞き覚えがあったので、顔を引き
見ると作業台を挟んで奥に、ピナスが腕を組みながら露骨に不機嫌な様子で
「…どうしてここに?」
「たわけ。貴様が例の広場から勝手に姿を消すから、イリア・ピオニーの頼みで
それを聞いたドールには、
「…ごめんなさい。少しの間だけと思って、私が悪魔を宿すきっかけになった場所に戻っていたの。ここはディレクタティオ大聖堂の
ドールが
ピナスとは初めて顔を合わせたときにグレーダンの史実に関し衝突していた
気まずい沈黙が
「教団の
「…厳密には、他の色んな素材と混ぜ合わせていたみたいだけど。でもその金型は、もしかしたら教団の人達が使っていたものじゃなかったのかもしれない。」
「だろうな。
「あの奇妙な武器が隕石を含む素材で作られていたのなら、
ドールはピナスが
それに
ドランジア
「…やっぱりドランジア議長は悪い人だったのね。グレーダン教団と
ドールが
「千年祭など、
その物言いを聞くや
「そ、そんな言い方しないでよ。千年祭は大陸の民が厄災の苦しみから救われると共に、
「何を
だがピナスの
「…ごめんなさい。私は
「
ドールはピナスが嫌味を吐きながら、自分の背後に掛けられている額縁に視線を移しているのが
現に自分も同じような殺され方をしていたことから、
「『人間の寿命は短く、身体は
「そんな
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