第18話 真白の工房
「それでドール…
イリアがやや戸惑いながら尋ねる声に釣られて、ステラも
見ると、巨大な黒い十字の支柱のようなものが無造作に壁に立て掛けられていた。
太さだけでも1メートルはあろうかという石像か何かかと思ったが、床に着いている部分を除く三端はいずれも乱雑に削られて長さが
そして良く目を
白と黒と金色の
だがドールは立ち上がると、その破損した石像に向かってゆっくりと歩み寄りながら返答した。
「…そのうちの1つです。これは千年前、預言者グレーダンが隕石を加工して『
その説明だけで、ステラには本能的な
「十字架については聞いたことがある。グレーダン教にとって重要な遺産であり、現代でも大聖堂の祭壇に装飾として並び立っていたのだと。それがどうしてこんな地下空間で壊れて放置されているのか…それも知っているというのか?」
「はい。大聖堂の祭壇に飾られていたものは
ドールが打ち明けながら振り向いた先には
壁際に囲まれた一角には
歴史ある大聖堂の地下にこのような空間があるのは何とも奇妙であったが、イリアもクランメも、そして遅れて到着していたネリネも
そんななか、イリアが工房を
「実は噂には聞いていた。グレーダン教派が何らかの密輸に関与し、関税法に係る特措法の成立に抵抗していたのだと。そして大聖堂崩壊後間もなくして採決に妥協したのは、大陸議会側にその証拠を差し押さえられたからだと。遺物である隕石が用いられた製品の取引を、国が公然と認可するはずがない。恐らくグラティア州を
そう言って
「…ええ、確かにメンシスの闇市場では『本物の隕石を素材に
「そうか。だが
するとクランメも奥の方から歩み寄り、
「厳密には『
「十字架の譲渡…議長はまた、何とも
「どこまで先を
「成程…だがそれにしては管理が
ステラはイリアとクランメの
そんななか、再びドールが発言を差し挟んだが、ステラには背を向けて
「答えは簡単です。その『
ドールが説明しながら地下空間の奥にある大きめの机の方へ歩いて行ったが、何かに気付いたのか
それでも不自然な沈黙を作らぬよう
「ここに明らかに装飾品とは思えない型があります。丸い棒状で、片手で持てるような大きさになるものが。」
それに対し、イリアが
「
「でも…ピナスさんは何か見覚えがあるみたいでした。」
「ピナス・ベルが? …彼女は
その短い会話に生じた違和感で、ステラはこの地下空間の空気が一気に緊迫したことを察した。
イリアの当たり
——きっとイリアさんもピナスさんの状態に不審を
「…すみません、もう1つだけ
するとドールはイリアの問いかけを
イリアは呼び止めようと口を開いたが、再び様子見に
同じく不審な
「これは旧大陸帝国王グレーダンが住まう王宮で玉座が置かれ、後にディレクタティオ大聖堂の祭壇となった場所に
ステラは説明されるがままに、その
一方その
「うちも学者やないけど、多分に国宝級の価値があるんやろうなとは思って見とった。問題は
「…ディレクタティオ大聖堂は長い歴史の中で
「恐らく時を同じくして祭壇の十字架も
ドールの推察を聞いて、クランメは腕を組みながら感心したように
「確かに十字架の素材は尽きるのが見えとったし、その教団の体質なら国に寄贈の対価を求めても
だがその応対は、ドールに主導権を握らせないための
ステラだけが
「すみません…私、
すると、ドールは
「まずは私が
「厄災を生み出さないための
その悲痛に声音を震わせた謝罪を、ステラは
「そしてもう1つ…私、あの広場に戻ったときに
「だって悪魔を宿した人達は
「
その冷徹な
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