第17話 成すべきこと
この無機質な世界で目覚めたときから、ステラの
『先生、この国にはね…厄災を
目覚めた広場で一堂に
だが一連の会話からその願いを発した青年の名は一度たりとも出て来ることはなく、複雑化する事実関係と仲間内の不協和音に戸惑い、意思決定を生前の仕事仲間であったイリアに
ピナスという幼い外見をした女性の行動原理に危うさを覚え、生前と同じ振る舞いを貫徹することで自我を保とうとしていた。
自分が毒に
『…先生はお節介で、正義感も責任感も強いから、きっとなんでも1人でやろうと
胸の内で青年の言葉を
だがその決断は、自分が
——厄災を
——現世に生きる人達のことを想えば私達は大人しく消え去るべきで、多分イリアさんも同じことを考えている。でもリヴィアさんとネリネは、理由は違えど賛同していないみたい。
——もう、どうしたらいいのか
その
黒い花弁が舞い散る中に
イリアも同じ気持ちだろうと横目で
「ドール…長く待たせてしまったことは申し訳なかったが、一体
「も、申し訳ございません。つい魔が差して…故郷であるディレクタティオに戻っていました。」
委縮しながら
あまり責めてあげないで欲しいという意を瞬きと共に伝えたつもりだったが、イリアは
「私もそのように推察し、飛行能力があるピナス・ベルに
「…あのラピス・ルプスの民は、確かに私を訪ねてきました。ですが今は…その、倒れ込んでいて…身体が何だか消えかかっていて……。」
更に
ステラは
「イリアさん、早く助けに行きましょう! 私は
とはいえ、イリアが
そのためにもステラは肩を借りずに、しっかりと自分の脚で立って主張を通そうとしていた。
「…
イリアはステラの強い意志を受け入れざるを得なかったものの、再び歯切れ良く的確な指示を発信しようとした。
だが予想外にも、ドールがそれを
「あの…お手数なんですけれど、この場にいる
ステラとしてはドールが以前何かを主張しようとして
「何があるか
その答えに異論を唱える者はいなかった。ネリネのみが依然として気に食わない様子だったが、静かに
それを見たドールは
「ありがとうございます。それでは着いてきてください…ディレクタティオへ。」
ドールの右手をクランメが、左手をイリアがとり、ステラはイリアのもう片方の手をとりつつ、ロキシーを背負うネリネを抱き寄せるように腕を回した。
一方クランメもまたネリネの肩に右手を置いており、6人で作り上げた輪を
間もなく視界が晴れると、ステラ達は先の広場よりも開けた場所に立っていた。
地面は相変わらず黒ずんでいたが、周囲には同じく黒ずんだ
またここは小高い丘の上であるようで、眼下では黒い屋根の街並みが沈黙していた。
その光景はステラにとって、死の
「ここは…ディレクタティオ大聖堂が建っていた場所だな。」
ドールを
ステラは
その一方で
——彼女はグレーダン教の修道女なのに、どうしてここまで破壊の限りを尽くしたのだろう。でもきっと、何か想像もつかない
「
立ち止まり振り返ったドールは、足元にある大きな穴を指差して
穴の先には人が2人並び立てる程度の広さの階段が続いており、周辺はここだけ人工的に
この世界の物体に直接干渉できないことから、現世が元々そのような状況だったことが推察
「なぁピオニー隊長、大聖堂の跡地は大陸軍が管理しとったはずやろ。こないな落とし穴を
「ちゃんと黒い板のような物で
地下へと
だがその違和感の正体は、
ドールを先頭にイリア、クランメが
一方で背後ではネリネがロキシーを抱えながらゆっくりと後を着いてきていた。
一度
長く感じた階段が
すると
「…ピナスさん!!」
ステラは夢中で駆け寄ってイリアからピナスを預かると、両腕の裾から伸ばした
その青白い
——良かった。
その一方で、ステラはピナスの身体に徐々に満ち行く活力を感じながらも、幾つかの疑問を
——この人はあれほどルーシーさんに固執していたはずなのに、こんなに魔力を
——そもそも悪徳が機能しないと言われているロキシーと違って、身体そのものが傷付いて気を失っているようにも見えるわ。
「
不意に目の前で
興味深そうに
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