第12話 代償
——何これ…この
譲渡した桃色地のドレスに何ら変化はなく、ただロキシーの腕や脚に至るまでの地肌が、
リリアンが声を掛けても返事はなく、眠っているのか気絶しているのかも判別がつかなかった。
——どうして? あたしを連れて『転移』をしたから? でもあの軍隊長も
リリアンはロキシーが宿す悪魔の力について把握しておらず、特段問い
目的が
そうして思案する間も、少しずつロキシーの肉体が透明になっていくような気がした。その現象が紛れもない死を連想させて、リリアンは無いはずの心臓が
——どうする? どうすればいい? この
だがその一方で、リリアンは自分がこれほど
——いや、そもそもこの
何も無い、と思いたかった。ただ貴族令嬢を
仮にロキシーが目の前で消滅したとしても、目覚めたときに居た広場を退出したときのように、
——それなのに、
リリアンの
結果的には悪魔の力を解放しつつ強引な理屈を押し付けてやり過ごしたものの、そのまま追及され
それでも自我を保っていられたのは、ロキシーがイリアの追及を
仮にロキシーを失い、イリアが他の者達と疑惑を共有させた場合、「ネリネ嬢」を
——この
そう決心したリリアンは、ロキシーを両腕に抱えたまま立ち上がると、生み出した風に乗って割れた窓の外へと浮遊した。目の前には白い樹木が立ち並んでいたので、そのまま舞い上がって邸宅の屋根へと着地した。
自分より
だがその違和感は、屋根の上から見えた奇妙な光景によって
セントラム盆地を模した
それまで
だが良く目を
——あれは…氷? あのクランメ・リヴィアとかいう眼鏡女が生み出したものと同じなんじゃないの?
——ということは…あの女はここに転移して、ずっと
その推測とともに、リリアンは再び舞い上がって湖の一端へと向かい始めていた。
ロキシーを抱えていながらでは
一度
『リヴィア
リリアンは
だが語られた以上の
真っ先にあの広場から離脱した彼女に、
何の交渉材料もなく一方的に要求を押し通すなど、生前の海賊団の身であれば
——それでも、
黒く塗られた湖の
その
リリアンがその近くに着地し、それと同時に吹き降ろした風が彼女の
あからさまに無視されていることを
「…確か、クランメ・リヴィアとか言ったわよね。
その問いかけにクランメは
そして視線を合わせぬまま身を起こすと、溜息混じりに
「まさか最初にうちを訪ねて来るんが、ピオニー隊長ではなく
「…馬鹿にしてるの? 研究員なら質問には答えなさいよ。何の専門かは知らないけど。」
「いや、
リリアンは
少なくともクランメが
「さっきこの
貴族令嬢の姿を
「その
だがクランメがイリアと知人である以上、虚実を積み重ねても暴かれるのは時間の問題であると考え直し、
「……私が悪いの。この
そのしおらしさを
「その
だがクランメの答えは期待に反して
「何よそれ!? ちゃんと説明しなさいよ!!」
当のクランメはその声音を
「生前悪魔を宿したうちらは、その時点で肉体と魔力が融合してもうて普通の人ではなくなってるんや。そして疑似的に『封印』され濃縮された魔力をドランジアが
「そして魔力を構成する要素は3つある…『
「それはさておき…ロキシーとか
リリアンはクランメの語りを聞きながら、
だが当初の裸同然の
その一方で、クランメが述べる前提を踏まえると、
「せやけどロキシーにとっての愛する異性どころか、そもそもこの世界では男すら見当たらん。悪徳は言うなれば渇望や。それを
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