第10話 不毛な衝突
イリアの記憶にあったネリネ・エクレットという貴族令嬢は、噂に聞いていた通りの
関税法に
だが貴族令嬢らしく気品と礼節は
それ
何よりあの霊園を模した広場では鋭い洞察力を見せていたことも、違和感の1つに数えられていた。
生前にネリネと
だが釈明もなく断固として自分達を
そこにはネリネの人格に対する認識の
そして同伴させていたステラにはネリネとロキシーの足元付近まで地中に
悪魔の力を行使しない限りは自分達も同じ条件で説得を試みる——それが今後2人に足並みを
だがその算段には、もう1つ暗黙の前提があった。イリアがそれに気付いた時には
霊園の広場でも見せつけられていた彼女の風を起こす力を警戒してはいたが、まさか
その空色の眼光は獲物を狩る
そして
——いくら悪魔を顕現させているとはいえ、これではまるで
イリアの背後ではステラが青白い
「…もう一度だけ
歯を食い縛り
「あたしはネリネ・エクレット…それ以外の何者でもない。あんたはあたしと会ったことがあるみたいだけど、その一度の応対であたしのことをどこまで知った気でいるの? 性格や雰囲気が違うから…そんな
だがその声音はどこか震えており、イリアには彼女が何か
「
「それこそ偏見でしかないでしょう!? ネリネ・エクレットとはそういう裏表のある人物だった…ただそれだけのことよ!!」
「ならば
「意味ならあるわよ…あんたのその
その宣告と共に少女は空色の瞳を輝かせ更に暴風をがなり立て始めたので、イリアはこれ以上言葉で彼女を
——やむを得ない。何度も悪魔の力に依存したくはないのだが…出し惜しみをしていては
腹を決めたイリアは周囲で揺さぶられている空気を——金色の
だがその一瞬生じた
「それがあんたの悪魔の力ってわけ…どうやら舌を切り落とすのは難しそうだ。それなら世界の果てまで吹き飛ばした方が早い…いっそこの世界の果てを見てきてもらった方が、何か有意義な情報が得られるかもしれないしね!!」
少女はイリアへ言い聞かせるように
そして周囲に巻き上げる風に乗って高く浮かび上がり、その風を
低く
だがイリアが驚いたのは、その竜巻に吸い上げられるかのように一帯の建物の屋根や壁が音もなく
この世界の造形物には触れたり動かしたりといった干渉は
他方でイリアはその間にも踏ん張りが効かず徐々に竜巻に引き寄せられていたが、
ステラが
——私はともかく、戦闘や
——まったく不毛な争いだ…
ピナスの一件も
そして飛び去ろうとしたピナスを喰い止めたときよりも更に激しい雷撃の束が、白い天井からのたうつように降り注いで竜巻に絡み付いていた。
あわよくば
——駄目だ、このままでは
だがそのとき、
——どうした!? ステラに何かあったのか……!?
イリアは
青白い
呼吸を止められているようには見えなかったが、ステラは全身を硬直させて大きく目を
——私としたことが…ネリネ嬢を抑えることに
——あのロキシーという少女は確かセントラムの領主貴族の使用人…ならば宿している悪魔は『
内心で失態を責め続けていたイリアだったが、
死んだ身
状況を把握しようと
吹き荒れていた風は余韻を残すように治まっており、イリアは弾丸のように飛来した彼女に文字通り蹴り飛ばされたのだと理解した。
「…さすがに
「お嬢様、まさか骨折されているのでは…!?」
「べつに平気よ。立つ分には問題ないし。」
これだけの危害を生み出しているにも
下着姿の少女は
「ネリネ嬢様、ここは一度
少女は
そして2人の姿は
再び世界は沈黙に満たされ、金色の
イリアは全身を打ち付けられた反動が
ステラは意識があるようだが呼吸が浅く、苦し気に目を
——この体調を回復させるには、やはりロキシーに加減してもらうべきだろうか。ロキシーが転移した先がセントラムならば後を追えなくもないが…今は追跡すること自体、裏目に出てしまうような気がしてならない。
——ここは…少し時間を開けてお互い頭を冷やすしかないのか。どうすればあの2人には、取り合ってもらえるのだろうか…。
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