第9話 共謀
あからさまに不安を
すると黒一面の海とは反対側、大きな建物が並ぶ広い道沿いに、イリアとステラの姿を捉えた。
距離にして
大人である2人が何のために自分たちの前に姿を現したのかは、
——やはり気を悪くしておられるんだわ。私達が何も正当な理由なく離散していったから。…でも、きっとネリネ嬢様は…。
「何の用かしら? 慣れ合うつもりはないと言ったはずだけど?」
案の
「
「
ネリネの悪意のある言い回しと
ただでさえ生前の経験から大陸軍人には苦手意識があったにも
当のイリアは
「リヴィア
「
これを聞いたロキシーは、思っていた以上に自分達が
当初は
だがネリネは一向に、従属しようという意思を示そうとはしなかった。
「それは
「確かに
「我々が何らかの理由があってこの世界で目覚めたことは確かであり、不測の事態から
理路整然と説得に努めるイリアが逆に名指しで問いかけると、ネリネはまたばつの悪そうな顔をして視線を
「目的なら…あるわよ。少なくとも無限に時間があるわけじゃないことは
その
だが本気で自分達を連れ戻そうとするイリアに対し、現状では言い訳が苦しいことも認めざるを得なかった。
——ネリネ嬢様は、一体どうされるおつもりなのだろう。目的なんて、私も
すると、遠くからイリアの小さな溜息が確かに聞こえた。そして
「確かネリネ・エクレットは箱入りの貴族令嬢であると生前は聞き及んでいた…そんな
その指摘を受けるや
「私達を前にして
ロキシーはイリアの指す『転移』が、あの奇妙な
それはネリネも例外ではないはずであり、
他方でそのネリネは徐々に
「
「壊滅させたのは
「本当にしつこいわね…私が素直に故郷に帰らないことがそんなに
「…そうだな、確かに奇妙だと思っている。
イリアがネリネの人格そのものに疑念を掛け始めたので、さすがのロキシーも非難の言葉を投げ返したくなった。
いくら
だが当のネリネは口答えするどころか地に手を着き、肩を震わせながら
そのためロキシーは慌ててネリネの前に
「ネリネ嬢様、大丈夫ですか!? どこか具合が悪いのですか……!?」
声を掛けようとしたそのとき、不意にネリネはロキシーに着させていたドレスの腰元に右手を忍び込ませた。
そして引き抜かれた手には鋭いナイフが握られていたので、ロキシーはあまりにも物騒な仕込みに思わず悲鳴を上げそうになった。
だが
「…あの口
一方でその張り詰めた空気を
「メンシスで厄災が起きたあの日、私は部隊を率いてエクレット邸を訪ね、その際ネリネ嬢とも
「……今よ。」
他方のロキシーもまた弾けた風圧に放られるようにして道角の大きな建物の陰に追い
沿道に並ぶ建物を
——なんで私、こんなことをしているんだろう。本当はあの隊長さん達の言うことを聞いた方がいいはずなのに。争う理由なんて何もないはずなのに。
ロキシー自身にもこの世界で目覚めた際、何者かが背後に張り付き言い聞かせるかのように『ドランジアを殺せ』という言葉が脳内で
確かにあのときリンゴを直接手渡してきたルーシー・ドランジアは、悪魔を宿す標的として自分を見定めていた事実を認めざるを得なかった。
だが彼女が語った言葉自体に悪意があったとは思えず、
その一方で、イリアやステラに従属することにも
この2人も自分と同じように何らかの厄災を引き起こした身だと認識しつつも、大勢の罪なき人々に危害を加えた自分が並び立ち関わることに、明らかに及び腰になっていた。
——きっと私は責任感とか倫理観とかから
ロキシーが振り返った先には高く
そしてその発達を抑制するかのように白い天井から雷撃が降り注いでおり、
風を操るネリネがイリアと
押し付けがましい同行を許し、上等な衣服まで提供してくれたネリネに
——あの
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