第8話 胸算用
「…ピナスさん? 大丈夫? ごめんなさいね、加減してるつもりなんだけど…。」
不自然な絶句で硬直したピナスが不安になり、ステラは青白い
何度かイリアに視線を送って次の選択を
その
「…もうよい。今後勝手な真似はせんと
その態度の急変振りにイリアは思わず目を丸くしたが、ステラは
青白い
だが直後、一気に魔力が戻ってきた反動なのか立ち
お互いに死んだ身であるはずなのに、そのときどこか懐かしいような温もりが
「大丈夫だ…何ともない。」
それでもステラはピナスを抱き寄せたまま、
「ねぇ、
それはピナスが逆に尋ねたい
行方を
だがそれ以上に、追及されることを恐れた。
自分のせいで、
——
——
そうして回答を
——リオナはリンゴを食べて悪魔を宿したと聞いた。それは
——
「…さぁの。
自分を納得させたピナスは返事を
「それで、この後はどうするつもりだ。」
ステラとは異なり、イリアに対しては
イリアもその関係値を
「…一度先程の場所に戻る。その後は私とステラで、ネリネ嬢とロキシーを連れ戻す。2人は
その説明の
その段取りは前もって決めてあったのか、協和を歓迎するその
怪我を処置しながら顔を
——
そして彼女が示す行為が目的地へ同時に転移するための方法だと
だが無意識に掲げていた左手をステラが引き寄せると、先の転移の
その
——やはり、しくじったな。…ここに来て心残りなど、新たに作るべきではなかったのだ。
次に瞬きをしたときには、ピナスは黒い花畑で囲まれた円形の広場の中心に降り立っていた。
クラウザの場合とは異なり、一度見ていたとはいえ思い入れなど
だが広場に満ちる沈黙に違和感を察したピナスは、やや
「おい、ここに誰か待機させているのではなかったのか。」
その指摘にイリアは虚を突かれたように目を
「少し待たせ過ぎちゃったのかもしれないわね。近くを歩いているのか…それとも何かあったのかしら。」
一方でイリアは長考することなくピナスの名を呼ぶと、淡々と指示を伝え始めた。
「方針が定まらず申し訳ないが、
「確かこの方角へ北上すれば、ディレクタティオの街が見えて来るはずだ。彼女もまたもしかしたら故郷に足を運んでいるのかもしれない。だが、あくまで現世と同じ地形が続けばという前提だ。何か身の危険を感じたら、迷わずまたこの広場へ戻って来てくれないだろうか。」
ピナスはイリアが白い天井に向かって掲げた指先を記憶すると、
だが軽く
——まったく、
——だがよりによって今度は
深い溜息をつきながら狼の耳を
ピナスは仕方なく立ち上がると、敷地内を手あたり次第見て回ることを決めて走り出し、広場の奥に伸びる坂を駆け上った。
背の高い樹木のような物体に
上りきった先は
その足元には人工的に囲われたような黒い空間があり、幾つもの正方形の物体が等間隔に並んでいた。そして正面にあった最も大きな物体に刻まれていた白い文字に、ピナスは顔を
——『ドランジア一族の墓』…
だが何よりも目を
広場に咲き並んでいた花々とは造形は違えど黒一色であることに変わりはなかったが、
ピナスにはそれが
——これは一体誰の
一方その頃、ロキシーは生まれて初めて海を見ていた。
セントラム盆地の中央に広がるラ・クリム
そのくせ足を着けようものなら
それ
彼女の話によると、ここは国の2大交易都市の1つであるソリス港を模した場所であるらしく、行く宛などないと発言していながらも、ロキシーには彼女が何らかの意図を
この貴族令嬢が
——生前にお仕えしていた
他方でロキシーは、胸元に空いた
依然として痛みはないものの、何か
——なんだか、変な感じがする。この感覚は…『
気落ちするように悩んでいると、頭上から柔らかい風が吹きつけて来たので、ロキシーは
「あの…何か、
「そうね…きっとここは現実のソリス港なのでしょうけど、相変わらず何も動きを見せる物はないわね。風も無いから波も立たない。重力の概念はあるみたいだけど、物体に触れて動かすことは出来ない。
だがネリネは不満そうに報告しつつも、ロキシーの肩を寄せて
「でも何か嫌な予感がする。もしかしたら、あまり悠長にしている時間はないのかもしれない。」
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