第4話 散開
クランメに続いて
だがそのどちらの意図も
ドールは体感したことのない風圧に身を
「待ちなさいよ! 行くのならこっちの氷も壊してからにして
ピナスは少しの間
ドールは無表情の獣が自分の脚まで
間もなくして風が止むと、広場を
「
ピナスは露骨な溜息を付いたのち、
そして強烈な下降気流の反動で舞い上がっていた黒い花弁と金色の
伝承でしか触れたことのなかった、ラ・クリマスの悪魔が
「…おい、
だがイリアが気の
ドールが
「付き合ってられないっていったでしょう? ドランジアを生かそうが殺そうが私の知ったことではないわ。邪魔はしないから
その冷淡な捨て
それを脇目に見たロキシーもまた浮き腰になりつつ、ドールたちの方に小さく一礼したのち
沈黙が戻ってきた広場にはドールのほか、イリアとステラの3人しか残されていなかった。その
「…イリアさん、これから私たち、どうすれば…?」
大陸軍の部隊長を務めていたはずの彼女の表情は、とても重苦しく思い詰めているようにドールには見えていた。そしてなんとかして言葉を絞り出しながら、手探りで目的を
「死んだはずの我々が
「…いや、それでも単独行動だけは
「それよりも
一方のステラはその方針に耳を傾けながら、無機質な白い空を見上げて
「でもあの
「ピナスはリヴィア
「…ネリネとロキシーの2人は、どうするんですか?」
「ロキシーはともかく、ネリネ嬢にはそうした行く
「…それもそうですね。確かにイリアさんは、グラティア州の街並みを熟知していますものね。」
その会話の流れで自然と2人が消失し転移を試みようとしているように見えたドールは、
「…あ、あの。私は、どうすれば……?」
呼びかけに反応して同時に振り向いた2人の
そんな被害妄想など知る
「すまないが、君はここで待機していてほしい。この空間は、ここで目覚めた7人が共通して記憶している場所だ。
「…
渋々
そしてイリアがステラの手を取るとほぼ同時に、例の
黒い花畑に囲まれた広場は沈黙を完成させ、ドールは力が抜けたかのように花壇の
——結局私は、こうなるんだ。
音も温度も存在しない空間で再会できるかも
——こんな思いをするなら……死んでいた方が良かったのかな……。
舗装の行き届いた広い街路の中心を、ネリネことリリアンは黙々と歩き続けていた。
イリアの見立てに
だが例に漏れずどの建物も
他方でこの世界で目覚めたときから裸足であったが、完全に地に足が着いていないような感覚で、痛みも疲労も
だが人ではない、自分と同種の気配がやや後方から付き
「ねぇ、いつまで付いてくるつもりなの? いい加減
突然
「…ご気分を害してしまい申し訳ございません。…しかし私は、領主貴族様の使用人なので。ご令嬢であるネリネ様にお
「あのピオニーって部隊長さんだって
「…いいえ、私の独断です。ピオニー様には、何ら声を掛けられておりません。」
リリアンは委縮するロキシーを
あまり
——何でこの
——でもそのまま追い返すのも何だか後味が悪いし、
周囲を見渡しても呉服店や仕立屋のような店は見当たらず、手あたり次第に住宅に入ろうと玄関扉の取っ手を
一度死んだ身
「…取り
「…!? ……ですが、それではネリネ様は…?」
一方のロキシーは予期せぬ
「別にいいわよ、こっちの方が動きやすいし。いいからさっさと着て
令嬢としてあるまじき発言ではないかという
あの夜
この
だが結果としてネリネの外見と令嬢という肩書に釣られた、ロキシーという自称使用人との
——本物のネリネはこんなにがさつじゃないけれど、箱入りだったあの
「どう? 問題ないかしら?」
リリアンは
「…すみません、少し胸元が苦しいです。」
「あら、そう。それは良かったわね。」
ドレスを
他方で、彼女の藍色の長髪と桃色地のドレスが不釣り合いに見えたものの、
「それにしても、随分と恵まれた容姿をしているのね。私よりもずっと
その感想はリリアンにとって
「…
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