第3話 手掛かり
ドールが
「なんでそんなことを
「うちはドランジアとは
「…そもそもそんなリンゴを大陸各地に行き渡らせるなんて、到底現実味があるとは思えないんだけど?」
だがその動きを制するように、イリアがゆっくりと歩み寄って代弁した。
「それについては、私にも責任がある。大陸軍の国土開発支援部隊に、議長らが密かに指揮していた『
「…隊長としてその実態を見抜くことが
だがネリネは
「だからそれが現実味がないって言ってるの。一国の首相が手を加えたリンゴっていうのは、当然一度市場に流通した品物になるでしょう。それがまた何日もかけて運ばれるのなら、多少なりとも品質は落ちるはずよ。でも私が悪魔を宿す前に口にしたリンゴは、少なくともメンシスで売られていたものと同等くらいの新鮮さはあったわ。それでも本当にドランジアが諸悪の根源だと断定できるわけ?」
その具体的な批判に、イリアとクランメは思わず互いに顔を見合わせた。だが一呼吸おいて向き直ると、クランメがネリネの顔を
「ドランジアが何を
「…別に。ただ私には関係のないことだって思いたかっただけよ。ここが
ネリネは一歩
「落ち着かない気持ちは
柔らかく包み込もうとするような説得に、ネリネは毛嫌いするような視線で
「私も同じように考えている。議長はラ・クリマスの悪魔と共に
一方でその説得に対して、ピナスが黒い花畑に
「とはいえ、いつまでもこの場に
「…議長は大陸議会に
イリアは回答に苦しみながら、クランメに補足を依頼する視線を送っていた。それを受けたクランメは、仕方なく肩を
「うちも詳しくは知らん。地道に
「
クランメが皮肉を挟みつつイリアに問い返すと、イリアは重苦しい表情で
「…議長の
イリアが明かす
円形の空間は
ロキシーは依然として黒い花畑に
だが一連の情報を踏まえて、
そして白衣を
「リヴィア
「ちと確かめたいことが
「…何を言っているんだ? 詳しく話を……!?」
イリアが更に一歩を踏み出した瞬間、クランメを除く6人の足元から腰の辺りにかけて一斉に
ドールは
——あれ、全然冷たくない。…私はこれを氷だと認識しているのに。
白と黒を基調とした空間で青白い色味を
改めて広場を見渡すと、姿勢の低かったロキシーは肩の辺りまで素肌が
他の者も寒がることなく騒然としており、ネリネは不意打ちのように危害を加えたクランメに非難を飛ばしていた。
「ちょっと!? 一体どういうつもりなのよ!?」
「あんまし暴れん方がええで。下手したら身体が傷付くかもしれへん…まぁ今更痛覚を感じるんかは知らんけどな。」
「だからっていきなりこんなことする必要があるわけ!?」
声を荒げるネリネに
「リヴィア
「
だが無感情に返事を寄越すクランメを前に、イリアは絶句して思わず
「…何だと…? しかし、確かに
「確かに大陸議会宛に会合の無期限延期を伝える書面は送ったけどな。そもそもうちの筆跡なんて、あんたは知らんやろ。それもきっとあんたを
クランメはそうして言い残す形で、後ろ姿が
目の前で新たに生じた不可解な現象に、残された6人は一様に目を疑った。
「ねぇ、誰かどうにかしなさいよこれ! ここにいる全員悪魔の力が
その後方でドールは
だが氷を
——悪魔の力は厄災を
だがそのとき、広場の奥の方から
ドールが
悪魔を宿したラピス・ルプスの民が従えると言い伝えられてきた狼のような青白い生命体は、ドールが思っていた以上に
だがそれよりも、ピナスが背中から生やした
「
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