第8話 平行線
イリアにはこの青年の
——5年前…グリセーオ…あの
一方のルーシーは
「
「
「僕が暮らしていたジェルメナ孤児院は大陸軍の
イリアはカリムの淡々とした追及を
現地が復旧するまでの間、被災した孤児たちの顔は一通り見てきたつもりだが、彼のような
そしてそれ以上に彼の追及が真実であるならば、当時多大な敬意と称賛を集めたルーシーの振る舞いが、
「
仕方がないと言わんばかりに首を
「半分正解、とはどういうことですか?」
「当時の私は常時ディヴィルガムを携行していた。そして厄災が起きたのは確かに私がおまえのリンゴに魔力を込めたからだ。だがそれは決して意図的なものではなく、偶然の産物に過ぎなかった。私はその偶然の感覚を記憶し、クランメに悪魔を顕現させる手段として活用したのだ。」
「偶然…? 悪意はなかったとでも言うのですか?」
「具体的な計画がなかったわけではないが…それではおまえは納得しないだろう。魔が差したとでも捉えて
その
「
だが一方のカリムは、凍り付いた地面に古びた杖と瓶を静かに置くと、ローブの
そして無言のまま一歩進み出ると、ルーシーが低い声音でその
「私を殺せば厄災の無い世界は実現しない…クランメに刷り込まれたおまえならその封瓶が不完全な
「…
カリムの声音は
「僕はリオの命を奪った悪魔に
「でも結局のところ、リオに悪魔を顕現させた原因が
その明確な裏切りの言葉に、
ルーシーは
「…でもそれだけでは、リヴィアさんとの約束は果たせない。だから議長、
「あの封瓶で悪魔の『封印』が成立するわけではないと自覚しておられるなら…集めさせた膨大な魔力を利用することが目的なら、それがどのようにこの世界の平和に
だが自分と同じようにクランメの遺志を継ぎ、自分よりも遥かに優勢な構図を作り出し真実を追求するその青年には、一筋の
——この青年もまた、リヴィア氏から託されているのだ。相次ぐ厄災に気を揉まれながら、きっとその
——その意味では、もしかしたら彼とは協調できる余地があるのかもしれない…!
イリアは
そしてルーシーの口からどのような真意が語られるのか切望し、警戒しながらも静観を続けた。
「
「別にその点は気にしません。僕が納得するかどうかの問題なので。ただ、黙秘を貫くようであれば
「おまえが納得するのなら、当たり
「…もし怪しいところがあれば、あの封瓶とディヴィルガムは海にでも投げ捨てます。」
「
ルーシーがカリムに向かって吐き捨てると同時に、イリアの周囲の氷結が——厳密にはルーシーと『
イリアのみが依然として氷結に捕らわれたままであり、何の温度変化もなく都合よく形勢が逆転した事実に理解が追い付かず
——
カリムもまたその現象が想定外だったようで、異変を察知するや
——この青年もまた、
イリアはこちら側に飛び込んできたカリムを
——こうなってしまっては、
「青年!
イリアはカリムに意図が伝わることを信じて
『
鼓膜など
だが不思議とイリアの耳には何ら影響がなく、
10秒とも経たない間に広場一帯は
巨大な花のように広がっていた氷結も原型を
改めてイリアが周囲を見渡すと、暴虐の限りを尽くしたような
激しい衝撃のお
——これが…厄災を振り撒くということか…。
——取り敢えず
不意に白煙の向こう側から揺らめき近付いてくる人影をイリアは察知すると、反射的にその影に向かってもう一度電撃を放った。
しかしその一撃は何か見えない壁のようなもので
依然として傷一つ負わず距離を詰めてきたルーシーの姿に、イリアは目を丸くして思わず一歩
——あれだけの雷撃を前に、
『奴も悪魔を宿したうちと同じように魔力を扱えるみたいやからな。』
そのとき脳裏に
「…まったく、派手に荒らしてくれたものだ。悪魔を宿したおまえが為すべきことは
ルーシーの
その一方で、この
「議長こそ
イリアの
「ですが
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