第6話 引き金
ジェルメナ孤児院を呑み込んだ青白い
発生源とみられる
侵食の速度は決して早いとは言えなかったが、生命体のように
イリアもその
その間にも
だがその様子を見兼ねたルーシーが声を張り上げ、
「火矢は駄目だ! あれは植物を模しているだけの
ルーシーは彼らの背中に向かって他の隊員にも同様に伝えるよう指示を投げかけた後、依然として
「おまえも早く行け。ここは私に任せるんだ。」
短くも心強い声を聞いたイリアは、次の瞬間には弾かれるように
その途中、布に
視界に
後から聞かされて知った『強欲の悪魔』という厄災は、発生から1時間もかからずに終息したのだという。
ジェルメナ孤児院を始め十数軒の建物に被害が出たが、巻き込まれた住民数十名のうち、厄災を
結果としてルーシーの迅速な判断と指示が厄災に
周辺住民の避難誘導に没頭していたイリアは、その後も建物の復旧や被災者の容態確認などに追われて、具体的にどのように厄災が鎮圧したのかを知り得なかった。
ルーシーはその間に一部の隊員を
ただ、ルーシーがこの地で残した実績は
被災区画を復興させるなかで、気付けばジェルメナ孤児院に従事していたステラともルーシーへの尊敬や期待を語り合っていた。
——あの
——いずれ我が国の首相として君臨し、良き未来へと我々を導いてくださるに違いない。だから私もその背中から学び、先導の下支えが
——そうしてあの
**********
背後で拳銃を構えて
ルーシーも距離を維持したままイリアの顔を
「…申し訳ございません、議長。やはり私は、議長には
結局のところルーシーが本当にラ・クリマスの悪魔をこの大陸から排除してくれるのかという確証はないし、必要悪だから構わないと言わんばかりに国民を
だがそれが何年も前から、身内を失ったその日から掲げていたのかもしれない壮大な本懐であるならば、自分が異議を唱える筋合いはないように思えた。
父ジオラスの協調を得て、『
その2人以外にも至る所で『
そして元より自己犠牲の精神を心掛けているが
それが正しいことであるならば
——どれだけ
——議長は私の尊厳や正義感を
——だがこうして直接
穏やかに自身を納得させたイリアは、
少し離れたところで、ルーシーがまた1つ小さな溜息を漏らしているのが
「それなら仕方ない。……やれ。」
だがイリアは身体に何の痛みも感じないどころか、銃弾を
恐る恐るイリアが振り返ると、ウィロとナンジ―が共に
——何だ…? 一体何が起きたんだ…!?
2人のうちどちらに駆け寄るべきなのか、どちらが確実に助かる見込みがあるのかなどとイリアは当惑していた。だが1秒が刻まれていく
——
心臓が
そして、聞いたことのない低い声音ではっきりと言い聞かせてきた。
「イリア…本当におまえには、失望したよ。」
その瞬間、イリアの心の中で
そして、
その
イリアは全身に電撃を
だがその
イリアは額に青筋を浮かべながら強引にその防御を突破しようとレイピアを振るい、その度に全身から電撃が
それでも大柄な人物は
やむを得ずイリアが後退すると、円形の広場では他にも同じような
目の前の大柄な人物はともかく男女の区別は
『
彼らの武装の詳細は判然としなかったものの、ルーシーが最後の悪魔を捕らえるため周到に対策を講じていたのかもしれないと考えると、イリアの
「…無駄な抵抗は止めて大人しく捕らえられるんだな、イリア。私を
人影から聞こえるルーシーの
包囲網を崩すには至らなかったが、それでも足止めする程度の威力は発揮できているようであった。そして
「責任
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