第6話 不意打ち
具体的な期限が提示されたことで、
正確に言えば、これだけ
「…一体何を根拠にそないな時間制限ができんねん。うちは悪魔宿した身でどんだけ普通に生きられんのか予想もつかないんや。おまえに命を握られとるようなもんなんやで。せやからちゃんと確実性を保証してくれへんと、納得して協力する気なんて
だがその
「根拠? そんなものを言う必要があるのか? 私がやると明言したことはこれまで
その粗暴とも受け取れる
——ああもう…
それは頭ごなしな仕打ちに対する怒りではなく、根拠などなくとも成し
——せやけど、そないな感情の波に揉まれることに
悪魔が顕現したクランメに対しては
「…
「特に意見もないのなら、今日からでも命題に取り掛かってくれ。連絡をくれれば、『封印』の実験には極力立ち会うつもりだ。」
これで要件を済ませたと判断したのか、ルーシーは今度こそ研究室を後にしようと荷物を
だがクランメはその背中に向かって、最後に
「おいドランジア、もし5年以内の約束が果たせんかったら、多少はうちの氷結で痛い目に
だがそれを聞いたルーシーは、鼻で笑うように警告を言い残した。
「残念だがおまえは私を殺すことはできない。悪徳とは
それから2年後、ルーシーは宣言通り大陸議会の議員として転身した。そこには例によってドランジア
だがルーシーはその聡明さと権威性を
一方のクランメも仕事や研究の合間を
悪魔を宿した日を境に体質が慢性的な冷え症を
そんななかクランメは
だがそれが機能するかという実験は、
なお、このときから
そして更に年月が過ぎ、ルーシーは当時の大陸議会議長の任期満了に
その頃にはクランメもまた、封瓶の試作品を
——そもそもラ・クリマスの悪魔の定義って
——大前提として、悪魔を
——悪徳を供給されなくなった悪魔が凍結保存できるか
その疑問はルーシーに
それどころか、
クランメ自身もその主張には理解を示さざるを得ず、その要求に応えていた。元より
案の
だがクランメもルーシーも
それがラ・クリマスの悪魔による厄災であると直ぐに
——この国の歴史的建造物が焼失した以上、現場は大陸軍が掌握せざるを得なくなる。そうすればドランジアの主導で十字架を押収することも不可能とは言えない。…もしかして、そのために奴は意図的に厄災を生み出したんか!? うちが以前、悪魔を顕現させられた時のように…!
だが首相となったルーシーには、今まで以上に
その事件から7日ほどが経った頃、封書と共に簡易な小箱が送り付けられてきた。小箱の中身は、グレーダン教徒が一般に身に付けている黒いペンダントだった。
だがクランメがそれを拾い上げると、
『それは焼失したディレクタティオ大聖堂の地下から押収された一品だ。手に取って
『大聖堂の祭壇に飾られていた十字架は
**********
「…で、それが例のペンダントや。あん
クランメは白衣のポケットから小箱を取り出すと、机上を滑らせてカリムに見せつけた。とはいえその外観を
あくまで度重なる厄災の
「その数日後にメンシスで別の厄災が起こった。メンシスが密輸品の
「そうして大人しく待ち
「ドランジアの真の目的はラ・クリマスの悪魔の半永久的な『封印』やない。集めた
「その上で何を
「せやからうちを見逃す
もう一度
「リヴィアさんの
「うちが最後と知られたら警戒されると思われとんのやろ。封瓶の予備はまだ持っとるはずやし、きっと残る『
「いえ、だからその…僕は最初に『
「…
カリムが気まずそうに小さく
それもまたルーシーによる
——ドランジアは憎らしい程に有能で、あからさまな妥協や嘘を許さない奴だとうちは散々思い知らされて来とんねん。あいつは確かにうちにこう言った…『野望を果たすそのときまで、おまえの命を
——つまり、野望を果たす準備が整ったから、うちがその
「あのとき現場にドランジアが直接出向いとったことは新聞でも報じられとる。奴の
「『
その
そこには呑まれるように捕らわれた1つの人影があり、不意打ちを
氷柱の中から腕と顔だけを露出させた
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