第5章 象る昇藤
第1話 急襲
『日が暮れたら外を出歩いてはいけないよ。…
ラ・クリマス大陸で育つ子供は、大人たちから
その青白い
人間にとっては根源がどうあれ、
曇天に隠れて朝日が
昨日『強欲の悪魔』による厄災の被害を受けたグリセーオの街では大陸平和維持軍による救援活動が夜通し展開されており、その被災地から背を向けるように走り出す車両の乗客は
どちらかといえば首都が置かれるグラティア州からグリセーオへ、支援部隊を追加で送り込むための
その機関車の最後尾の客室車両では大陸議会事務官に
進行方向を背にして通路側に座るサキナは腕を組みながら静かに目を閉じており、カリムは窓辺で肘を付きながら右手側に広がるオディアム渓谷の樹海、その先のアヴスティナ連峰をぼんやりと眺めていた。
大陸中央部プディシティア州に広がる
昨日グリセーオで起きた厄災をなんとか収束させ、様々な感情が渦巻き頭の割れそうな思いをしたカリムだったが、今は
青年の
その淡い
カリムがぼんやりと
その一瞬の出来事にカリムは思わず眉を
そのとき、車両の前方辺りから複数の男の悲鳴と共に騒がしい物音が飛んできた。
サキナが
そのカリムの元へ向かって、青白く輝く狼のような動物が
それでもカリムは
『強欲の悪魔』が生み出す青白い
だが息付く暇なく1匹、また1匹と通路奥の扉の隙間から同じような青白い獣が
「
カリムが慎重に
前方には他にも数名の乗客がいたはずだったが、成す
その様子を察したサキナがカリムを援護しようと拳銃を取り出し、通路奥の
だが実体が
「やはり効果なしか……!?」
舌打ち混じりに
背後の扉からも
座席に
「…悪い、油断した。」
サキナは
「このままじゃ
その指示に顔を
だが次の一歩を踏み出そうとしたその瞬間、上空から巨大な青白い鳥獣が
その
しかし見覚えのあるその鳥獣を目前に、サキナの内心で
冷ややかに流れる外気にも
機関車に追随するように
そして巨大な鳥獣の形を構成する青白い光が一点に収束すると、人の形となってサキナからやや離れた前方に降り立った。
「…その
その独特な口調を発していたのは、
少女は
だが頭部では狼のような耳が
そして
「……ピナスなの…!?」
サキナは血走った
予想だにしていない事態の連続に
「こうして月日が経つと良く
ピナスと呼ばれた少女は、その容姿と声音に合わない
「ほれ、さっさとその物騒な
「今更
カリムが『強欲の悪魔』に
だが『封印』を命じられている以上は致命傷を与えるわけにはいかず、封印に用いる杖を握るカリムを呼び寄せる必要があった。
とはいえ足止めの
だが人間よりも遥かに視力の良いピナスにとってはその瞬間を視覚的に捉えることも、足元へ放たれる銃弾を回避することも
その突き飛ばされるような衝撃に体勢を大きく崩されたサキナは、機関車の屋根から転落しないようその身を抑えるため、拳銃を手放さざるを得なかった。拳銃は機関車の駆ける音に
他方でサキナの両手はピナスの鋭い爪に裂かれることなく軽く
だがピナスはまた少し距離をとって少女の姿に戻り、
「まったく
「…黙れ。『
サキナが小さく吐き捨てる
そのとき2人の間に割って入るように、カリムが車体の窓から屋根へと飛び移ってきた。
通路に
だが噂や伝承でしか存在を知らなかった『
それでも『
他方でピナスはその先端に着装されている黒い鉱石を視認すると、そこから放たれる胸を刺すような敵意にほんの一瞬動揺しつつも、
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