第6話 貴方が殺した理由
だが
——そういえばこの大陸では昨日までに、3つの厄災が立て続けに起きていたんだっけ。メンシスの竜巻被害、セントラムの伝染病、そしてディレクタティオの
——その人たちはどうなったの? 厄災が終わったということは、その人たちは命を落としてしまったということ? …カリムたちが、命を奪っているってこと?
不安と懐疑に
「ねぇカリム、
先程とは打って変わって冷ややかに変容したステラの声音を前に、カリムは
「…機密事項なんだよ。実際に悪魔を顕現させた先生だからって開示するつもりはない。」
「じゃあ質問を替えるわ。大陸軍でもない
「だったら何だって言うんだ? また昔みたいに説教でもするつもりなのか?」
カリムは杖を構えながら、ステラの
——もしカリムにとって厄災と
——でもだからといって、突き放すわけにはいかないわ。道を踏み外したのなら、元に引き戻すのが私の役目。…5年前のあのときと同じように
「ええ、そうね…
その静かな叱責とともに地鳴りが起こり、カリムの周辺を囲い込むように地中から
カリムは反射的に杖を振り
その包囲網を上から
その表情からは
「教えなさい。悪魔が顕現した人の命を、
カリムはステラの
その
「…俺が直接手を掛けたのは、2人だ。」
「そう。
「ただ殺すだけじゃ、悪魔を捕らえることはできない。正しい方法で、顕現した人の命ごと捕らえる必要がある。それを『封印』と呼んでいる。結果的に殺すことと変わりはないけれど、『封印』を施さなければこれからも厄災は起こり続ける。…この大陸の平和を実現するための必要な犠牲なんだよ。」
「でもそれは、
本当はそんな理由を
生命活力の総量を上げるため、
——それでも、ちゃんと
一方のカリムは、
「理由なんて聞くまでもないだろ? 悪魔が憎い、理不尽にリオの命を奪った悪魔が憎い。その悪魔に
ステラに突き付けられた青年の答えは、予測していた限りで最も単純なものであった。だからこそ、ステラは単純な動機として理解を示すつもりはなかった。
「いいえ、それは答えになってないわ。
「だから、それ以外に悪魔を封印する方法がないんだって言ってるじゃないか! 俺だって何も考えずに悪魔が顕現した人と
「それなら
その問いかけにカリムは一瞬動揺したが、ステラがこれから並べるつもりであろう
「そんな
「だからといって命の奪い合いをしていい道理にはならないわ。」
「道理も正義も知ったことか! 俺は昔から目的のためなら手段を選ばない愚かな悪党だ! 俺は悪魔を滅ぼすためならなんだってやる! そのためだけに今を生きてるんだ!!」
その
——
これまでのことはもう終わってしまったことなのだから、口を出される
「…
ステラの哀れみを差し向けるような問いかけにカリムは虚を突かれ、
「な、なんだよそれ…そこまで答える必要があるのかよ…?」
「ねぇ、
「……。」
それはカリムが
その短絡的な人生観で
「カリム、
——もう、これ以上の言葉は必要ない。カリムはここで私が抑えつけるしかない。あとは時間を掛けて、ゆっくり自分自身と向き合ってくれればいいわ。
「
「だから…
ステラは子供を寝かしつけるような静かな
「おい!!
その寸前、ステラの背後で捕らえていた少女が切迫した声音を張り上げた。
それまでの間も少しずつ少女からは生命活力を吸い上げていたにも
だが少女の視線は真っ直ぐカリムを囲む
ステラが再びカリムの方を
その中心に悠然と立つカリムが、力強く握り直した杖を使って分厚い
「まったく、
ステラが溜息を付きながら
——おかしい。さっき
次の瞬間にはその枯れ行く根元から地中を侵食していた
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