第5話 悪魔の使い方
ステラは
——
——…それでもこの力なら、治せない傷なんてないんだから。
一方の少女は間接的とはいえ、傷跡に
カリムもまたステラの意図が読めず、包帯に絡み付く
だが少女は特段苦しみ
少女が左手首に負っていたはずの火傷のような傷跡は治癒されて
「どうかしら?
ステラは両腕を広げ、カリムに向き直って得意げに言い聞かせた。カリムはその
「…まさか、その恩を売った代わりに大人しく引き下がれって言うつもりなのか?」
だが期待通りの反応が得られなかったステラは、両手を
「そんな
ステラはそう言いながらまた少し浮き上がり、捕えている少女の背後に回って盾にするように肩に抱き付いて見せた。
カリムの目にはその構図がセントラムで
「先生、一体何をするつもりなんだよ!? 先生に顕現しているのは『強欲の悪魔』なんだろ!? 人から生命活力を吸い上げるその力がどれほど凶悪なものなのか、先生は5年前に身を
カリムが
——
——でもね、カリム…実際に悪魔を宿してみて初めて
「この
その切り返しに、カリムは思わず半歩たじろいだ。悪魔の力に正当性を語ること自体、意外であったかのように見えた。ステラはその反応に何ら構うことなく、カリムを見つめながら語り続けた。
「グリセーオが最近の度重なる厄災のせいで物資が行き着かず食糧難に
「だから厄災の力を借りて、流通事情が回復するまで
「さっきは力の扱いに失敗して気絶しちゃってたみたいだけど、もう
カリムはステラが抱え込んでいた壮大で無謀な野望を前に、また半歩
厄災の力を借りるという発想自体が受け入れられないようだったが、それ以上に信じ
「先生、その言い方だと…まるで自分からラ・クリマスの悪魔を呼び寄せたみたいじゃないか。」
ステラには青年の震えた声音に沸々と湧き上がる怒りが
「ええ、その通りね。だってそうするしかなかったもの。」
「どうして!? …いや、どうやって都合よくそんな
「理屈は私にもはっきりとは
ステラがリオの名前を口にした
その瞬間、ステラの背後で少女の身体に巻き付く太い
同時にカリムの前方を
「
だがステラは何ら身構えることなく、低く冷たい一言でカリムの暴走を制止させた。
ステラの背後では、少女が一気に
「今
「この
ステラは一通り言葉にしながらも、これがグリセーオの問題を平和的に解決する足掛かりと言うにはあまりにも卑劣な所業だという自覚はあった。
だが今は、ここで自分が
そしてゆらりと振り返ると、新たな
「
「…笑わせるな…悪魔に協力なんて、してやるものか……悪徳に呑まれた
初めて口を
その
「悪徳に呑まれた、か…。確かにそう
ステラは再び警戒するように数歩距離を取り始めていたカリムに向かって、首を
「私、リオと同じ悪魔が顕現したことで、リオの抱えていた気持ちが理解できたような気がしたの。虚弱体質で寝たきりだったあの子は
再びリオの名を出されたことでカリムは顔を
「
「…!! ……なんで、先生まで、それを…?」
「私だって多少の疑念はあったわ。
「今更
「ただ、リオがそんな
ステラはそう言って捕えている少女の元へ近付き、先程治癒を掛けた左手首を優しく握って持ち上げた。
「生命活力の操作っていうのはあくまで
「言うなれば、夢中で
そしてステラは高台から一望できる
「でも、私は違うわ。私は愛する孤児たち、グリセーオの人たち、そして
「…そう、これは願いを叶えるための力なのよ。確かに悪魔の力は恐ろしい厄災を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます