第3話 2つの毒
だがカーテンを閉めたことで薄暗くなった室内を振り返ると、ソファではまだカリムが
確かに男性を即死させるだけの毒を、
毒を生み出すための嫌悪に似た冷たい感情の
全身が激しく
それでもなおカリムは、口元から泡を吹き出しながらも体勢を起こそうとその身を震わせ、血走ったままの瞳でロキシーを睨み付けていた。
その執念深い蛇のような視線にロキシーは思わずたじろぎ、
——どうしよう、もっと強めて毒を盛るべき? でもこれ以上に強くすることなんてできるのかしら? そもそもどうしてあの人はこんなに耐え続けていられるの…?
ロキシーは思わず口元を両手で
だが不意に、何か現状に
『もしかしたら天性の耐性があるのかもしれないですしね。』
青年が不用意に発したと
合点がいくというより、そう捉えた方が都合が良いように思えてしまった。
ロキシーは口元から両手を放してゆっくりと息を吐くと、身体の緊張を和らげると同時にそれまでとは
——私ってば、過剰に神経質になっていたみたい。まだあの人が本当に私を
——でもそんな私の
——近付いた人が
ロキシーは深い
そしてソファの上で全身汗だくになりながら
ロキシーの身体から
間もなくしてカリムが力無く
だがこのままではカリムが風邪を引いてしまうと思い我に返ると、
また一段と高鳴る胸の鼓動が沈黙に満ちた邸宅に響くようで、ロキシーはくぐもった笑い声を抑えきれずにいた。
カリムは、昏倒する前よりもさらに暗い部屋で目を覚ました。
どれくらい時間が経ったのか
脳内が
身体は
だが、全身が柔らかく温かいもので
皮肉にも
そして続け様に、別の更に生温かい何かがカリムの右半身に絡み付いていることを認識した。
「…ふふ。
今は亡きフォンス
そのベッドの中でカリムは
彼女は白地の
カリムが
壁の
「カリム様。突然あのような
ロキシーはカリムの右肩に頬を
だが毒に
カリムの汗を
2つの銀札にはそれぞれ名前が刻まれていた。1つ目は『カリム』と記されており、この青年の本名を裏付けていた。
2つ目は『リオ』と記されていた。恐らく女性の名前だろうが、恋人同士で身に付けるお
仮に恋人同士だったとしても、それが過去のものであることは想像に
——
そのとき、ロキシーはカリムの胸板の上で動く影を認識し思わず息を呑んだ。
まだ毒が
ロキシーはカリムの想像を絶する抵抗力に
その過程では
ロキシーは横たわるカリムの上にやや身を乗り出す形になり、その引き
開き切らない
「どうしてカリム様はそんなに私の毒に
「…もう言わずともお
「東部は比較的治安が良くない地域ですもの、節操がない
長い髪で
「でも街の住民の
「その
ロキシーはその
そして今度はカリムの左側に顔を並べて、
「私はカリム様を愛することにしました。私の
ロキシーは
「そう思うと、今までとは違った心地良い毒が
「しかしこのような一方的な愛情をきっとカリム様はお受け入れ下さらないでしょう。ですから、カリム様が満足されるよう身も心も尽くして差し上げます。これから昼も、夜も、いつでもカリム様を
その宣言の
「5年ほど前からでしょうか…私が毎晩このベッドで
「ですがもっと信じられないのは、私がその間一度も
「その薬はこの大陸では表立って流通していない、
「…
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