第6話 悪趣味
「…だとしたら何? 悠長にこのまま停泊し続けるつもりなわけ? あんたが
両手は縛られ
ヴァニタス海賊団という集団が、世襲で
尻尾を巻いてここから逃げ出すわけにもいかず、重圧に
それでも団員たちは実情を
だからこそリリアンにとって、ネリネは
ネリネを
決して
——それなのに、ネリネは
視界の奥から、乗組員になおも身柄を抑えられ続けるネリネの姿が飛び込んでくる。その美しく
リリアンの様子を意識するような
——
「ネリネ嬢は今晩中に闇市場の人身売買に懸けます。」
ローレンが
「愚かな領主のせいで
その非情な算段自体に、リリアンは大した衝撃を受けはしなかった。
ローレンを問い詰めた手前、有能な彼なら
自分が身代わりになれないどころか、最悪自分も同じように奴隷商に売られる可能性があることも含めて覚悟はしていた。
だがその
——
——全部消してしまいたい。全部消して、全部無かったことにしてしまいたい。…だから、そのために…!
リリアンは瞳を大きく見開いて
「あたしの…ネリネを……返せええええええええ!!!」
***********
砂煙のような何か
ベッドの上でドレスを
天井どころか壁も柱も、この
——無意識に力が暴発したのか。昨晩の記憶が夢に出てきたせいで…。
徐々に鮮明になる意識によって今しがた起きた事態を把握し終えた少女は、ベッドからゆっくりと腰を上げていると、
そして、周囲に広がる
——いや、無意識のうちに自己防衛が働いたんだ。そして
少女は素早く身を
するとそのベッドの下に
まるで巨大な害虫を見つけたかのように、少女は思わず空色の瞳を大きく
その何者かはベッドを吹き上げた風が
他方で少女はそれ以上に
だが予想以上に軽すぎる手応えに、少女は少し姿勢を崩した。
襲い掛かってきた何者かはその隙を逃さないと言わんばかりに、今度は右手に握っていた棒状のものを、先程より広く開かれた少女の胸元に向かって
——!? こいつ…!!
少女は前面に構えられていた短剣だけに注目を奪われ、もう片方の手にも別の武器が
それでも、少女は後方へ倒れるように大きく身体を
少女の脚は敵の右側の胴に入ったと思われたが、無理な姿勢だったためかこれも会心の当たりとは言えず、蹴飛ばされて広場を転がった何者かは受け身を取って即座に立ち上がった。
少女もまた
「…あんた誰? さっきのカリムって人? それとも…『
目の前で短剣と槍のようなものを両手に携え、白い仮面と
「あたしの命を狙うってことは、やっぱり大陸議会とか大陸軍関係の
相手の身元を暴こうと挑発してみるが、当の
リリアンはこの展開を
そうでなければ、この
他方で
そしてこの
——あたしの風を起こす力といまの身の
——それでも
「突っ立ってるだけなら、さっさと返り討ちにさせてもらうよ!!」
リリアンはその宣言と同時に、
一方のリリアンは初撃を除いて追い風を起こすことはなく、単純な体術と
「おい、そっちは
リリアンは怒号とともに力強く右足を踏み込み、ナイフを振り抜いて
リリアンは更にその場で一回転すると、勢いを維持したまま数歩踏み込んで、
何を着込んでいたのか奇妙な反動があったが今度こそ痛烈な一撃となって、
そして受け身を取れる余地もなく、投げ付けられた人形のように力無く木の根元へ崩れ落ちてしまった。
何ら
無機質な白い仮面の奥にどんな表情が浮かんでいるのか多少なりとも興味はあったが、いまはこの
右手のナイフを
だがその右手は動こうとしなかった。この
その異変にリリアンは一瞬動揺したが、
——そうだ。ネリネに人殺しをさせちゃいけない。…ネリネを脅かそうとする人は
リリアンはその周囲に風を巻き起こし旋回させ、
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