第2話 巻き毛の少女
「…申し訳ありません、ネリネ嬢様…。」
「うるさい!! 早くここから出ていきなさいよ!!」
ネリネは感情的な拒絶を繰り返すことは愚策だと考えていたが、相手の
カリムと名乗る男の
そして自責の念に打ちひしがれるでも、
——いずれにせよ、目的地まで護送されるまでの
「…ネリネ嬢様、矢継ぎ早に礼節を欠いた追及をしてしまったこと、心よりお詫び申し上げます。」
カリムの
「しかし、これはあまり
だがそれ以上期待通りに事態が進むことはなく、カリムは至って真剣な口調で
その『厄災』という表現に、ネリネはまたしても身体を激しく揺さぶられるような危機感に
「先日、ディレクト州でグレーダン教の総本山である大聖堂が焼け落ち、大勢の教徒が焼死しました。大陸議会はこれを伝承に聞くラ・クリマスの悪魔により
「しかし5年に一度、
「今回の不可解な竜巻も、7つある厄災のうちの1つである可能性が高いのです。仮にそうであれば、ラ・クリマスの悪魔が顕現した女性が今なお
「そして厄災を引き起こした女性は、当時ヴァニタス海賊団に
——そこまで具体的に目星を付けていたなんて、こいつ本当に何者なの。
予期していた以上にこの青年が竜巻の核心に近付いていたことに、ネリネは
——でもここまで情報を引き出せたのなら、
ネリネは『ラ・クリマス大陸に伝承される7体の悪魔』について、簡潔な知識しか持ち合わせていなかった。千年前に預言者が定義したらしい7つの悪徳に呼応して、大陸に
だが、
——こいつが何をどこまで調べているのか知らないが、それならいっそ可能なところまで話を合わせてやろうじゃないの。
「…被災した事実だけでなく、その前に海賊団に
「あぁもう
気付けば
「そんなに知りたいなら私が見た限りのことを教えてあげるわよ。
カリムは令嬢の態度の急変に
今も揺れ続ける馬車でこれから打ち明ける事実関係を漏れなく書き残せるとは到底思えなかったが、ネリネはその心配も馬鹿らしくなり、さっさと聴取を終わらせることだけを考えることにした。
「初めに言っておくわ。
**********
その過程で、潮の香りに混じって木材の匂いを感じ取った。波が揺れる音、木造の床が
そこは
そして脳内で
「誰かーーーっ!! 助けてーーーーーっ!!!」
「おい馬鹿野郎!! 何やってんだ!!」
だが、
ネリネが拘束されていたのは両手のみであり、
「おいローレン、やっぱり
「ああ、だからこそ粗雑な道具で拘束するわけにはいかない。無駄に身体を傷付けてしまう可能性もあるからね。…それに、これだけ騒がしくなれば彼女もやってくるはずさ。」
ローレンと呼ばれた青年が低い声音で答えていると、その予測通り背後の船室の扉が荒々しく開け放たれ、金髪巻き毛の少女が甲板に飛び出してきた。
「一体何の騒ぎなの!? ……はっ!? ネリネ!?」
巻き毛の少女は乗組員たちに捕縛されているネリネを発見した
だが
「あんたたち、どういうつもりなの!? さっさとネリネを解放しなさいよ!!」
その怒号とともに少女は
周囲の乗組員も同じく抜刀して巻き毛の少女に襲い掛かったが、少女は軽やかな身の
だが
他の乗組員と比べ細身な青年は、力勝負でこの巻き毛の少女に
「
ネリネの驚き
ナイフを奪われ、抵抗も叶わず縛り上げられてしまったが、それでもなお巻き毛の少女はネリネを人質に捕るローレンを睨み付け激しい剣幕で
「全部あんたの仕業なんでしょう!? ローレン!! どうしてネリネを
「おや、ヴァニタス海賊団の首領リリアンは、エクレット家の一人娘といつの間に面識をもっていたんですか?」
ローレンの皮肉に
その様子を見たネリネもまた
「聡明なネリネ嬢様もお察しになられたようですよ。ご自宅で仲良くお茶を囲んでいたアルケン商会の若き女商人ユーリの正体は、ヴァニタス海賊団の若き首領リリアンであると。ああ、
ネリネの頭上で含み笑いを浮かべるローレンに対し、リリアンは
「…ネリネを、どうするつもりなの…?」
若き首領の抵抗に
「見て
「ですが違約金の請求は、契約を破棄された側が提起すべきものだと思いませんか。先代の頃からメンシスの活性化に大きく貢献してきた我々に対して、あまりに不誠実な仕打ちだと思いませんか。
「心配せずとも、
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