第6話 おわりのはじまり
ドールは想像だにしない光景と地下空間の肌寒さに身を
壁画の向かい側には、また別の何かを保管しているようないくつもの木箱が積み重なっていた。
その先には少し開けた空間があり、低い作業台や
——何かを加工する場所? 工房? 物や設備は古そうだけど、明らかについ最近まで人の手が付けられていたように見える。…やっぱり、教団には何か隠して生み出している物があるんだ。でも、一体何を……?
左側では群衆が
千年前に預言者グレーダンが厄災の悪魔を一網打尽にして
だが同時に、はっきりとした違和感も覚えていた。
『
それに対してこの額縁に収められた絵画にはどこか悲壮感が
千年前の神託の
——違う、これは『
——これはきっと…『魔女狩り』なんだ。
次の瞬間、ドールは目の前が真っ白になった。
**********
何も無い、真っ白な世界。
死んだ自分は暗闇に放り込まれるのだろうとドールは想像していたが、生きながら死んでいると視界は雪原のような一面の
もっと将来やりたいことは
それほどまでに自分の命は無様に転がされて生気を喪失してしまい、ドールは
——アメリアおばさんは、どうしてあからさまに
——もう一度会って話したかった。どういうつもりだったのかって問い詰めてみたかった。そして
だがそれ以上に、怖いと思った。その先に立つ自分の姿を想像したくなかった。
——私の軽率な立ち回りも、踏み入れた暗闇の深さを推し
とても背負いきれない
——神様、どうして私はこんな目に
赤子の頃から面倒を見てくれた教団は、触れれば即時処刑することを
その闇の存在を
敵対する者を圧倒する力を授かったところで、結局自分が人に
——神様、私は一体何のためにこの世に生を授かったのですか?
——それとも、やっぱり、最初から神様も天国も存在していないのですか?
——疲れた。何もかもが嫌だ。
——もう、いっそ死んでしまいたい。
真っ白な視界が激しく揺らめいていた。だがそれは絶望
炎が更に白く
ドールはその様子を
——炎を、制御できない。……止まらない……!?
本能的に危機を察し、
死神を追い詰めたにも
だがすっかり底の抜け落ちた瓶のように、満ちゆく力を
驚きと
その拍子に床に着いた左手が炎に触れた
気が付けば取り囲む炎に
——熱い。熱すぎる。ついさっきまでは炎を
急速に
自分の意思ではなく、やはり制御はできなかった。このままだと間違いなくに炎に呑まれてしまう。それが何を意味するのか
だがそこで
——ああ、そうか……私はもう、諦めてしまったんだ。
厄災の
その
物語で見聞きしてきたこの大陸の厄災に、長い年月に
悪魔が顕現した者の末路は、恐れ
——もういい。私の
力無くへたり込み
その瞬間、叩きつけるような風圧がドールの正面を襲った。
その勢いに
そして暗闇の奥から迫り来る影を察知した直後、更に棒状の何かが飛び出してきて、ドールの胸元に激突した。
見開かれた深紅の瞳は見覚えのある仮面の輪郭を映し、その奥から真っ直ぐに投げつけられる視線を捉えていた。
今度こそ確実に胸元を突いた黒い鉱石は、心臓を
だが、本物の杖であればその事実だけで条件は満たされた。
ドールは心臓が全身に
まるで隕石が大地に衝突する様を、とてつもなくゆっくりした速度で再現しているかのように思えた。
そして身体は空気に
一体自分の身に何が起こっているのか考えるまでもなかったが、そこには
——これが、『封印』…? 預言者グレーダンが『ディヴィルガム』を使ってラ・クリマスの悪魔を捕らえたという…神託による
——そうか…きっと私にとっては、これが正しい終わり方だったんだ。
決して幸福に溢れた人生ではなく、最後に犯した罪の数々は到底
それでも
その意味で自分の命が確かに必要とされたことで、ドールは
——
——さようなら。私の命が、
それらを身に付けていた者は
火種は完全に失われ、ディレクタティオの小高い丘には
その静けさを破ることのないよう、杖の持ち主は
そして丘の中腹に隠していた荷物の中から透明な液体が詰められた瓶を取り出し、平らな地面に置いて
その液体の上澄みに向かって杖の先端を傾けると、着装された隕石に吸収されていた
死神と呼ばれていた杖の持ち主はその現象を見届けると、再び
周辺一帯を包囲するように大陸平和維持軍の
その後死神は待機していた拠点まで戻ると、今度は荷物から小さめの紙切れを引っ張り出し、
[予定通り『
死神は手短に伝言を記すと、拠点の
大陸に生息している
まだ、夜明けまでには時間があった。そのなかで
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