第4話 熾烈の果て
ドールが死神に向かって、正確には死神の足元に向かって
死神は
それでもなお機を
その戦況は、死神が単独で打開するにはあまりにも困難なものであった。
大きく距離をとろうとすれば、それだけ確実に
また先程のように
そして回避に専念し時間が経過するに連れて、
その非現実的かつ圧倒的な脅威こそが、
だが
そのうち仕留められるだろうと
炎とは当然ながら火種がなければ
だが自然の
大聖堂を廃墟に変えるほどの短時間で激しい消耗をすれば、死神と
ドールはそのような事態を懸念し、局所的に狙いを定めた火柱という効率の良い攻撃方法を採っていた。だが予想以上に死神が執念深く立ち回っていたため、その方針の転換を迫られていた。
その
「ああ…本当に嫌になるわ…思い通りにならないと、どんどん悲しくなってくるじゃない…!!」
その状況下でドールは感覚を深く研ぎ澄ませ、
そして
不意を突いたはずの斬撃は岩盤を
ドールはその
露出した
「本当にしぶとい…。今度こそ絶対首を
ドールとしては無作為に
それでも死神の卓越した反射神経を前に
「動かないでね、死神さん。…動いたら、今度こそ燃やし尽くすから。」
無理矢理にでもローブを引き裂いて脱出しようと
虚を突かれ横っ飛びに回避しようとした間際を固定された死神は、不安定に
それでも、左手に持ち替えていた杖だけは
「用意周到な死神さんならご存知なんでしょう? 『
「生まれつき悪魔と
その
「
経験
だが死神がこの
いっそのこと多少
案の
そのとき、ドールは
死神とは別の
「…何も
扇情を試みたはずのドールの
いますぐこのぼろ人形を燃やし尽くして、何事もなかったかのように立ち去ることは
——立ち去るって、
——厄災を
全身を駆け
だがその暗闇に浸っていると、どこかから
『…おまえももう大人になるんだから、いつまでも
——何言ってるの。私がどこかに行ったらアメリアおばさんの面倒は誰が見るの。
『…偉そうな口を
——
**********
穏やかな昼下がりのディレクタティオの路地裏を、食糧の詰まった袋を抱えた修道女ドールが小走りに伝っていた。
正装の
ドールは街中を歩く時も必ず
3年ほど前に巻き込まれた
その場を治めたのが、アメリア・トリナーデという老婆だった。
その聞き慣れない姓は大陸外からの移住者であることを何より表象していたが、若かりし頃に夫婦で移住し街の発展に貢献し続けてきた姿は住民にすっかり
「悪魔の子だ? 馬鹿馬鹿しい、その小娘が今まで何をしたって言うんだね。あんたらの信仰とやらは、そんな小娘に石を投げつけるためのものなのかい?」
だがその後、アメリアは足腰が不自由になり寝たきりの状態になる日が増えた。
アメリアの𠮟責に一蹴されていた者の中には、悪魔を
それでも恩義を感じていたドールはその冷やかしを背中に受けながら、
この日もドールは予定していた買い出しを済ませ、アメリアの自宅前に到着していた。
玄関の前の鐘を鳴らして自分が来たことを知らせると、間もなく開錠される音がした。生前建築技師だった夫が自宅を改装し、居間でも寝室でも玄関の錠を手動で開閉できるよう前衛的な仕掛けを施したのだという。
その甲斐あって、アメリアは寝たきりの状態でも来客を迎え入れることができていた。
「アメリアおばさん、昨日言われてたもの買ってきたから、台所に置いておくね。」
ドールが報告がてら寝室に向かうと、そこには長い黒髪を下ろした、すらりとした見知らぬ女性が1人壁際に寄りかかっており、ベッドに横たわっているアメリアと何やら話し込んでいた。
銀縁の眼鏡をかけた黒髪の女性はナイフを片手に、器用な手つきでリンゴの皮を剥いていた。
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