第12話

ライと金竜人の全力のぶつかり合い。その攻防は先程の竜人との戦いが霞むほどに壮絶であった。


しかしその攻防は2分もしないうちに終わる。

竜人が一方的に殴られるという形で。


もし回避しようと動いたら、その先にはライの拳があり、魔力を込めて魔法を使おうとすれば、その込めようとした部位が破壊される。また回復しようとした部位も、同じように破壊し直される。


"魔法はわかる、だがなんで回復しようとしてる部分をピンポイントで狙えるんだッ!?"


その次にライの拳の威力と速度が上がっていく。


"回復が追いつかない"


そうして満面の笑みを貼り付けたライのラッシュに回復が追いつかなかった金色の竜人は、ただの肉片となって動かなくなった。


「相当強くなっちゃったな」


ライは自分の拳を見ながらそう呟く。

この金竜人はローズとは違い身体能力特化だったのか、魔法抜きの戦いでは現状最強と言える。だからこそ、それに適正してしまった今、これから出てくるであろう好敵手の少なさにため息をついてしまう。


そんな事をしている内に、今し方こちらに到着したローズに視線を向ける。

地面に着地する際も、砂埃ひとつ上がってないのを見て、魔法の練度の高さと砂埃をライにかけまいとする狂信者ぶりを感じる。


「お疲れ様です、ライ様」


労ってくれるのは嬉しいが、やっぱりセージのことは見向きもしない事に思考が向かってしまう。

しかしそんな考えを振り払って、純粋に抱いた疑問を口にする。


「金色の竜人って有名なのか?」


「おそらく、竜人族の族長の血が入っているのでしょう。もしかしたら当代の族長かもしれませんが。」


興が乗ってバラバラにしてしまったが、顔ぐらいは残して確認すべきだったな。


それにしても、今日は楽しめた。

やはりゲームとか理想郷が完成するまでの楽しみは肉体による対戦が1番である。


「もう今から魔界を支配しちゃおうか」


そうだ、そうしよう。

ふと思い至った結論だが、人数が多ければ多いほど理想郷に割ける人員も増えるし、もっと便利な種族が沢山いるはずだ。

この身体はもう睡眠すら必要ないし、魔界統一RTAなんて間違いなく面白い。その後は理想郷RTAだ。逆に今まで城でのんびりしていたのが間違いだったのだ。


深まっていく妄想に口角も上がり、ライは純白の羽を広げる。


「ローズはセージを送り届けて2人で理想郷の管理をしろ。それと残した竜人2人も使えそうなら使っておけ。俺は利用できる種族全部集めてくる。」


それを聞いたローズは何も言い返す事なく頭を下げた。魔界をよく知る彼女自身も俺が負けるなど想像していないのだろう。それにライが1番に優先している理想郷の管理という大役に感動しているのか、涙が溢れているのが見えた。


補足だが負ける想像がつかない理由として、ローズとは魔界に着くまでで何度も勝負をし、最後には普通に勝っている。その成長性を肌で感じたからこその信頼なのだろう。もしかしたらただの狂信者なだけかもしれないが。


まぁそんな下らない事より…


ライは金竜人との戦闘と同等以上の興奮を抑えながら口を開く。


「楽しくなってきた」


その言葉と同時に俺は空中へ飛び上がり、心の目を最大限まで拡張する。


「いつの間にこんな範囲広がってたんだ…」


魔界は未知の方が面白いと思い心の目を広範囲まで使ってなかったが、どうやら半径100kmは認識できるようになっていた。


「まずはあそこから行ってみるか」


そう言うとライはセージを助けに行く時の全速力よりも早くなっている全速力で、使えそうな種族を見繕っていく。


それから早い事に、3年の月日が経過する。



ーーーー

初めまして、作者です。次回から新章となるのですが、読んで下さっている皆さんの評価で作品の継続を決めようと思います。

評価欲しさではなく、客観的にこの作品が面白いかどうかの感想を頂けたら幸いです。

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