第11話

連携の取れた3人との戦いは、今までにないもので楽しかった。3人だからできるフェイントや攻撃、何より竜人の尻尾を使う攻撃には何度か軽い傷を受けてしまった。


しかしこっちはローズとの模擬戦で、肉体へのダメージすら適正がある。なので腕が千切れようとも5秒あれば生えてくる。よってかすり傷程度、瞬きする間に治ってしまうのだ。


もちろん疲労に対する適正もあるので序盤は楽しかった竜人たちとの戦いも、後半は複数人との戦い方も尻尾による攻撃も『適正』してしまった。


そこからは戦いというより蹂躙で、彼らの攻撃を軽くあしらってやった。しかしどうしても3人が諦めないので、俺は見せしめに全員の両足を切断することに決める。


せっかくなので道中学んだ基本属性(火、水、木)の中で木を選び、風の刃を作って切断する。

この風系統の魔法は相手に視認されないというメリットがあるものの、殺傷力は低いとされていた。


しかしそういう不可能な事に挑戦するのも面白いと2日ほど頑張ってみたら、魔界の岩石すら切断する風の刃が完成してしまった。


その時は適正の凄さに感動していたが、今の戦いのように楽しい時間が無理矢理奪われてしまうのはデメリット以外の何者でもないな。


そんな事を考えてると、両足が切断されながらも真ん中のリーダーらしき竜人は笑みを浮かべながら口を開いた。


「とんだ皮肉だな…!」

「最高に楽しめた」


どうやら今の戦いに満足したらしい。しかしこっちは前半しか楽しめなかったし、まずそんな事のために色々な種族を巻き込んでこっちに攻めてくるのは違うだろ。


今後この集団を理想郷に加えるなら、洗脳でもいいが見せしめも必要だと思うし、こいつだけ殺すか。


そう思い至ったらすぐに首を切断する。それから残り2人に目を向けると、死を受け入れているようだったのでテレパシーで洗脳する。


どうやら地猫族やダークドワーフの時に使った時に適正が働いたのか、敗北を受け入れていたからなのか、たった数分で狂信者にすることに成功した。

これからはボコボコにしてからテレパシーをするのが早そうだ。どうせすぐ適正して秒で洗脳できるようになるような気もするが。


「さて、虐殺は終わりだな」


ここで俺は心の目を使って周囲の状況を確認する。と、そこで西の方向からローズレベルの力の波動を感じる。

ここで振り返るが、俺を中心線に東がローズ、西をセージが担当していた。その時は西の方が弱い集団だったのでセージに任せたのだが、この謎の強者は後から来たか、能力か何かで心の目から逃れたのだろう。


ちなみに東にいるローズは全員を無力化してこちらに向かって来ている。彼女に焦りの感情がないのもわかるので、セージを信頼しているのか、どうでもいいと思っているのだろう。まぁほとんど後者だろうが。


という事で俺は全速力でセージの方へ向かうことにする。その前に残した竜人2人へ待機するように指示する事も忘れない。


動機としては、さっきまでの戦いでは物足りなかったのが半分、そして普通にセージを死なせたくない気持ちが半分だ。もちろん操られたり人質にでもなっていたら殺すけど。


「俺がセージに向かった瞬間、ローズの速度も上がってるしやっぱ後者だったか」


そんな小言を放ちつつ、最近忘れていた狂信者の恐ろしさを再確認するライ。

そんな事を考えていたら、目の前にボロボロになって横たわるセージと、黄金の身体をした竜人の前まで到着した。


まさかの竜人2連戦か。


ローズ並みの力で初見の種族が楽しみだったライは少しだけ落胆しながらも、横たわるセージの前まで歩く。


それを見たゴールデン竜人は、口角を上げて飛び跳ねながら甲高い声で喋り出す。


「まっさか生きてるうちに勇者に会えるとは思わなかったなぁ!」


「俺も金色の竜人とか最高に馬鹿げてて好きだよ」


その言葉が終わると同時、俺はセージの前に到着したので軽く蹴って遠くに逃し、臨戦態勢を取る。それを見たゴールデン竜人は笑いながらも同じように、見たことがない独特な構えをした。


「最初から本気で行こう」


「そういうの好きだよぉ!」


ローズが到着するまで、残り3分。

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