第9話

数百年前、血の女王によって様々の種族の強者たちが徴収され地上へ攻めさせられた。

我々は抵抗することもできず、結局は多くの仲間たちを失った。


「全て血の女王の暴挙によるものだ。先代たちの無念は、新時代を託された我々が晴らす!」


数千もの様々な種族の中でも特に武芸に優れていた竜人族の男が宣言する。

それに対して全員が狂気にも近い歓声を返した。


「進軍だ、過去とのけじめをつけ、自由を勝ち取るぞ!!」



視点は戻ってライ目線。



俺は遠くから進軍してくる野蛮なやつらを、遠視という魔法で眺めていた。


「魔界の環境が悪いのもあるが、地上とは比べ物にならない文明の遅さだな」


「ライ様。魔界ではドワーフや地猫族のような種族が異端であり、基本的には黒豹族のような戦闘に秀でたモノたちが日々争いながら生きています。もちろんライ様のご慈悲さえあればそんな常識も全て無課題ではありますが、それすらも受けられない脆弱な種族は淘汰されるか奴隷となり…」


止まらなくなってきたセージを横目に、俺は無視を決め込んで準備運動をしながら疑問に思った事を聞く。


「使えそうな種族はいるか?」


その言葉にセージはマシンガントークが止まり、ローズが答える。


「端に見える黄色の黄蜂族は蜜が取れ、その隣に見える高黒牛と高黒羊は衣類などで使えます。他にも……で、正面に見える竜人族は身体能力が高く、魔法道具の素材になります。」


中盤は飽きてきて聞いてられなかったが、とりあえず蜂、羊、牛、竜は飼うべきってことだな。知識もないので他に必要そうなのは二人に任せるとして、俺は身体能力が高いという竜人とでも戦うとしよう。

どうやらプライドも人一倍高いようかので、最後まで諦めずに戦ってくれると信じてる。


「俺が竜人を捕まえてくる。あとは好きなように選別しておけ。」


「「わかりました!」」


という事で、本当に久しぶりの本格的な戦闘が始めよう。


とその前に数合わせの奴らを間引くため、ローズが威圧を放ち半数以上の奴らが地面に横たわっている。


こんな攻撃で戦闘不能になるなら連れてくるなよとも思えるが、おそらく戦争という事で多くのヴァンパイアを引き連れてくる=味方にも被害の出る威圧は使わないとでも考えていたのだろう。


だが生憎今回は選りすぐりの戦力3人でのお出迎えだったので、ローズの本気の威圧が彼らを襲ったというわけだ。

もしかしたら単純に無知な可能性もあるが。


「じゃあ竜人以外は頼んだよ」


俺は興奮を抑えながら地面を思い切り蹴って、竜人の目の前に降り立つ。


「最初から本気で来いよ?」


戦いは楽しみなライだったが、長引くことは嫌いなのであった。

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