第8話

理想郷づくりから1ヶ月が経過した。


なんとあれから国民という名の奴隷が種類も数も増えた。具体的には黒豹族に加えて、地下で農業をして暮らしていた地猫族、たまたま放浪していたダークドワーフが4人がそれである。


ちなみに他の種族も遭遇したが、思った以上に反抗的でローズとセージが食事用として捕獲していた。補足だがヴァンパイアには血を抜いて保存できる魔法があるようで、腐ってしまう心配はないらしい。


そして現在の衣食住だが、衣類は黒豹族が狩ってきた魔物から選りすぐって制作し、食材は魔物の肉と地猫族が栽培した野菜を使っている。そして住む場所は捕まえてきたダークドワーフを使って、日本の知識と融合させて制作している。


もちろん最初は俺が暮らしやすいように城の改装工事をしており、大規模な工事となっているので現在も続いていた。

これは俺が願ったというより、そうしなければ狂信者たちが暴走するからだ。

ちなみに他種族の建造物は、俺が寝ている間に雑音が鳴らないように作業を止めるため、その時間を使って制作させている。

もちろん規模は小さいが日本寄りな利便性に優れたコンパクトな家で、水路などの噛み合わせも計算された配置になっている。


ここからは補足だが、俺も勇者だからか、封印への適正からなのか、睡眠が不要な身体になっていた。しかし日本の時から寝ることが好きだった俺は、今も変わらずに7時間くらい睡眠している。


そしてダークドワーフも睡眠も食事も必要ない種族で、全てのエネルギーは好奇心といった心の力で満たして動けるらしい。なので洗脳によって狂信者にさせたら、自己完結型で高性能なゴーレムの完成というわけである。


ドワーフというだけあって、モノを作る技術は群を抜いて高いのでもっと捕獲したいところではあるが、この1ヶ月間で見つけられたのが奇跡と言っても良いくらい、遭遇する確率は低いらしい。


もっと縄張りを広げて捜索するのもひとつだけど、管理が行き届かない。

それに急激な拡張は他の種族への刺激となって、大きな戦争にまで発展することもあるらしいのでやめておきたい。


ただでさえローズの復活が魔界に知れ渡ってるらしいし、いくつかの種族と同盟でも組んで殺しに来たら、せっさくの理想郷が余波で壊れてしまいそうで困る。


やっぱりそのためにも、今のところはナワバリを広げさせずに首都を発展させるとしよう。


そんな風に1ヶ月を振り返りながら、目前の目標を決めたライに対して、ローズから声がかかる。


「ライ様、どうやら南の方角で1万ほどの魔界に住んでる種族が攻めにきているようです。どうやら不敬にもライ様を脅威とみなした魔界の生物たちが、同盟を組んで殺害を目論んでいるのでしょう。」


はい、フラグ回収勇者すぎますね。お笑いに適応しないでくれ本当に。


最近はローズに任せて心の目も最低限の範囲に収めていたのもあって発覚が遅れたが、ローズの能力も高いので戦闘開始の半日前には気づくことができた。


「でも久しぶりの戦闘も悪くない」


そういえば黒豹族も地猫族も即降伏したので、未だに理性がある相手と戦ったのは王国騎士ぐらいだった。

それならば暇つぶしとして、なんならドワーフや生活を便利にしてくれる種族を発掘するために戦うのも悪くない。


そのためにも今回は余裕を持って戦いたいし、俺とローズとセージで応戦するとしよう。セージは強敵がいると若干不安だが、今心の目で認識した感じ数人しかいないので、それをローズと俺で処理すれば問題ない。


流石に青メイド……やばい名前忘れた。は今日も俺の身の回りを掃除させよう。意外にも彼女の尻尾や毛並みが気持ちいので、最近は狂信者というよりペット枠になっていた。


1番最初、俺が毛並みに魅了されてペットのような愛で方をしてからは、俺の求めた通りに言語すら喋らず可愛いペットを演じて…というかもう可愛いペット本人になっている。

今も、こいつが狂信者で知能があったなんて思えないくらいの純粋な笑みを浮かべながら俺の隣の床に座っていた。


「よし、じゃあ俺、セージ、ローズで襲ってきた奴らを捕獲する。俺が使えそうと感じそうなモノ以外は好きにしろ」


その言葉にローズは跪き、セージは名前を呼ばれた瞬間に影から流れるように跪いた。


最近は慣れてきたが、なんか監視されているようで少し怖い。

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