第7話
そして話は戻って、ライはローズと共に黒豹族の縄張りに足を踏み入れていた。
「ライ様がお手を煩わすことなく、私一人で処理できますが…。」
ローズの言葉は虚勢ではなく、ローズが地上に侵略に行って封印されるまでは黒豹族はヴァンパイアの縄張りに住まわせて貰っていた立場だったという。
しかしそこから100年ほどローズが帰ってこない事に気づいた彼らは、本能のまま狩りを始めヴァンパイアと争ったのだという。
それほどにローズの能力は魔界の中でも飛び抜けており、黒豹族にも最低限の知性があることがわかる話だ。
そういえば誰に封印されたのかと聴いてみたところ、どうやら当時最強の王国騎士1人にかなり弱らせられ、魔法使いの呪文と共に宝石へ閉じこめられたらしい。
そう考えると人間だからと言って舐めてかかるのはやめた方が良いな。実際俺は人間だけど、勇者の能力で並外れた成長性があるし、もし少しでも封印を保留していれば抵抗することだってできただろう。
と、話は脱線してしまったが、俺の能力である適正で、ここまでの1ヶ月身体能力から精神の力、そして魔法まである程度磨き上げることができた。
「この1ヶ月の成果を試したい。それに殺さず生け取り、忘れるなよ?」
「承知しております。余計な事を言ってしまい申し訳ございません…!」
いや聞いといて涙目にならないでくれ。本当に情緒がイカれてて一歩引きたくなるが、それでも自分のせいだし、美女なのでどうにかして耐えられる。
ここまで来たら大丈夫そうな気もするが、万が一にでも信仰がなくなれば厄介な状況になってしまうので、言動には最低限だが気を遣っていた。
「ライ様、前方に34匹の黒豹族が向かってきております。」
もちろん俺は心の目で把握していたのだが、ローズが律儀に報告してくれるので労いの言葉でもかけておく。
そして俺は蓄えた力を試す場が近づくことに胸を躍らせていた。
のだが、その黒豹族はローズだと認識した途端に綺麗な土下座を決め込む。
そして中心にいた1番体格の良いメスの黒い豹が叫ぶように言葉を紡いだ。
「血の女王様!私たち黒豹族は全面的にあなたに降伏します!」
狩り大好きな黒豹族が長寿だとも思えないので、律儀に未来の黒豹族たちのためにローズのことを伝えていたのか。
絶対脳筋だと思っていたので心配すらしていなかったが、どうやらローズの脅威が種族の骨の髄まで染み渡っているようだった。
俺の楽しみが冷めたのに気づいたローズが殺気の籠った視線を送るが、俺は早々にやめさせ、彼らに自分たちの城の下で暮らすように命令する。
どうやらローズの態度から自分たちのボスが俺という事にも察しがついているらしい。これはもうバトル展開は無さそうだ。
俺は下がるテンションに鞭を打ちながら、村にいる黒豹族も全員城に来るように命令する。円滑に進めさせるためにここから先はローズに任せて、俺は一足先に城へ戻ることに決めた。
移動で使った白い翼を展開して、風を切りながら空を飛ぶ。
なんか未だにワクワクするだけで何も楽しめていない気がする。
そして城につくと残っていた二人に歓迎され、少し早く戻りすぎた気もしたが掃除は全て完了していた。
どうやら青メイドが死体を持ってきてセージがまとめて焼却、飛び散った血は全て操って消したそうだ。
これが数百年共にした同族に対して行われているなど、文章だけ見れば気づけるだろうか。
という事でこれからは、黒豹族を民に迎えて発展させていこうと思う。とりあえず俺はセージに城での衣食住の方法を聞いたり、保存していた本を高速で読んで策を練る。
そして黒豹族総勢130匹とローズが戻ってきたので、俺たちは理想郷作りが開始した。
自由な居場所がないなら、作って仕舞えばいいのである!崇められるのは我慢だけども!
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