第6話

時は遡り王城更地時間の直後、私リリは彼方へ飛んでいくライの後ろ姿をただ眺めていた。


忘れている人向けの補足を入れておくと、リリとは王国最強騎士娘のことである。

当時のライは、更地になったインパクトとローズの容姿が強すぎたせいで、完全に彼女の存在を忘れていた。


しかしそんな事を知る由もないリリは、狂信者ぶりを発揮して通常では考えられない思考の飛び方をする。


「私がこの更地となった王国を治め、あなた様に献上しろという事ですね…!!」


確かに私には獣人のような身体能力はないし、封印石から出てきたヴァンパイアのような美しさもないただのガキである。

それでもあなた様は私を選んで下さり、城の人間ならば誰でもできる仕事を与えてくださった。


すなわち、私に慈悲として機会を与えてくださったんだわ…!!


そこから1ヶ月間、彼女は王城が更地になった事件を上手く使う事で国民を先導させ反乱組織を形成させつつあった。

もちろん王国は無断で勇者を召喚した件や王城更地事件でそれどころではないので、気付かれる事はなかった。


もちろん彼女はそんな現状も、全てはライの慈悲であると信じて疑わず、今日も今日とて無意味な宗教活動をするのであった。


2人が出会うのはまだ先の話である。

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