水曜日

「……お~い、どうしたの? なんか朝からぼやっとしてるけど」

「推理中。謎のお姉さんの」


 水曜日。

 今朝のお姉さんは特に変装しておらず、月曜日と同じような普通におしゃれな恰好をしていた。

 今朝の会話の内容はこの辺でおすすめの観光スポットや、おすすめのお店やお土産。

 でも、お土産は住んでいる場所のものなんて買うことこそあれど、食べることはあまりないから、結局何がおすすめかうまく話せなかったけれど。

 それに、話している時に分かったこととして、どいやらお姉さんは到着した日から今日まで止まっているホテルに籠りきりで、少なくとも今朝までは殆ど外出していなかったということだ。

 うーん、お姉さんには何か目的があるのだろうか、いや、もしあるのだったらホテルに何日も籠ったりはしないだろうし——


「──ちょっと! さっきから無視しないでって! お昼休みなんだし外でなんかしようよ!」


 ……と、まあ、朝からわたしはずっとこんな調子でお姉さんのことを考えているのだけれど、事情を知らないクラスメイトの友人はそんなことお構いなしの様で。


「今日はパス。そんな暇なら凪も一緒に考えようよ」


 わたしと同じくショートカットで、例えるなら……蛍光灯? みたいな明るさが取り柄の凪はわたし並み……とまでも行かないけれど運動神経抜群で、その辺の男子よりよっぽど運動が出できるから、わたしと凪はつるんで日頃からいろいろな悪だ……一緒に過ごしている。


「え~、あたしそういう頭を使うことは苦手だし。どうせ数日したらお別れなんだし気にしなくてもよくない?」

「まあ、そうだけど……」


 凪はただ単に、わたしの話でしか輪郭を掴めないお姉さんに興味がないだけだろうけれど、言っていることは悔しいけれどごもっともだ。

 それでもわたしがお姉さんに惹かれてしまうのは、……しまっているから気になるのかな。


「も~、じれったいな~。じゃああたしも明日会ってみていい? そうすれば聞き出せることも増えるんじゃない?」


 凪もか……、まあ、ちょっとうるさくなってもいいかな。

 それこそこの一時だけなんだから。

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