第41話 直接対決
翌日──
登校中、あちこちから視線と殺気を感じた。
重森とやり合ったことで学校中のゴロツキ生徒から狙われる存在になったのだろう。
しかし喧嘩を売ってくるものはいなかった。
重森に止められているのか、公の場で喧嘩をして停学になるのを恐ているのか?
いずれにせよ腰抜けばかりということだ。
教室に着くと美濃たちが俺のもとに駆け寄ってくる。
「司波くん、なんか朝から色んな人に睨まれているんだけど」
「やべぇよ、司波。やっぱ重森先輩に謝ったほうがよくね?」
「なにを情けないことを言っているんだ。お前らは司波軍団だろ。堂々としておけ」
「でもこのままじゃいつかボコボコにされそうで」
美濃は怯えた目をして訴える。
「誰がこのまま過ごすと言った? 心配するな。俺が二度と歯向かえないように懲らしめてやる」
「重森先輩と戦うつもりか!? やめとけ。確かにお前は強いが、体格差がありすぎる。ライト級がヘビー級に勝てないだろ」
「黙れクズ。体格差の前に実力差が圧倒的だ。あんなデブに負けるはずがない」
「お前、そんなこと言うな。誰かに聞かれたらマジで殺されるぞ」
葛原も粕谷も美濃も完全に恐怖に支配されていだ。これでは戦力にならないだろう。
「実際昨日だって重森先輩にマウント取られてただろ? 運良く抜け出せたからよかったけど、あのまま殴り殺されていたかもしれないんだぞ」
「運良くじゃない。余裕で抜け出せたんだ」
確かにあれは不覚だった。
あのデブがあんなに素早く動けるとは思っていなかった。
「もしあいつらに危害を加えられたらすぐに教えろ。制裁を加えてやるから」
「マジでやり合うつもりかよ……」
粕谷は震えながら自分の席へと戻っていった。
俺が厄介な奴らに目をつけられているというのは、雰囲気でクラスメイトにも伝わったようだ。 女子は心配そうに俺を見てくるし、男子はなるべく関わらないようにしていた。
勇真の奴なんかは露骨で、最近はやたらと話しかけてきたくせに、今日は目を合わそうともしてこない。
大変なとき誰が真の友達が分かるというが、まさにその通りだ。
ま、俺は別に大変なときでもないんだけど。
放課後、俺は単身で三年のクラスへと向かった。
三年たちには一年よりも情報が伝わっているらしく、すれ違う生徒はみんな驚いた顔で俺を見ていた。
「おーい、重森はいるか?」
「ほう? 自分から来るとはいい度胸じゃねぇか」
巨大を揺らしながらニヤニヤ笑った重森がやって来る。
「やべぇ、重森さんが笑ってる……」
「重森さんは笑っているときが一番キレてるんだ。あの一年、死ぬな……」
三年の生徒たちがヒソヒソと話しながら遠巻きにこちらを見ている。
「相変わらずデブだし醜い顔だな。絶対女にモテないだろ、重森」
「は? てめぇ、本当に殺されたいのか?」
「殺されたいのはお前のほうだろ。俺に喧嘩を売って、ただで済むと思うなよ?」
「ナメた口きくなっ!」
重森は机を蹴飛ばし、派手な音を立てる。
大きな音を立てて吠えるのは、弱い証拠だ。
「ほら、かかってこいよ」
「場所を変えてボコってやる。ついて来い」
重森は顎をしゃくって窓の外を見る。
ニヤニヤ笑いは更に激しさを増していた。
「なんだ?
「ここだと邪魔が入るだろ? 一時間以上は殴り倒してやりたいからよ」
「笑わせるな。お前なんて三分もかからずに失神させてやるよ」
「調子に乗ってんなよっ!」
重森が激昂し、胸ぐらを掴もうと突撃してきた。
予想通りの動きなのでスイッとかわして背後に回る。
「逃げんな、オラッ!」
パンチ、蹴り、パンチ、パンチ。
デカい図体をブンブン回してくる。
そのすべてをヒラヒラとかわす。
小さい身体で戦うなら、そのアドバンテージを活かすように攻撃を避けるのが一番だ。
重森は机や椅子をなぎ倒しながら襲ってくる。
クラスメイトの女子たちはキャーキャー言いながら逃げていた。
あまり騒ぎが大きくなると、すぐに教師が止めに来てしまう。
「逃げてんじゃねぇぞ、ド陰キャが!」
激情型の重森は怒りで咆えながら俺を捕まえようと突撃してきた。
「そろそろ決めるか」
飛び込んできた重森の顔面に膝を突き立てる。
「がぼっ!?」
鼻の骨が折れる感触があった。
重森は鼻血を噴き出しながらもがく。
一撃で気絶するかと思っていたが、なかなかしぶとい。
「ほら、どうした? 俺をボコボコにするんじゃなかったのか?」
腹、顔面を数発殴り、ローキックを太ももに放つ。
「があぁああ!」
獣のような声を上げて床を転げ回る。
情け容赦なく蹴りまくっていると、頭を抱えて丸くなってしまう。
「ほら、立てよ、ブタ。まだ終わってねぇぞ」
「てめぇ……」
重森は怒りに震えながら立ち上がる。
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ブチギレた魔王様は容赦がない。
覚悟しろ、重森!
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