最強の魔王、現代日本の中二病高校生に転生する。イジメていた奴ら、全員にリベンジします

第34話 日頃の感謝

　麻音子から逃げるようにして帰り、家の近所まで来たとき──

「あっ……」　

「あっ……」

　ばったりと花蓮と遭遇した。

　まあ近所なのだから鉢合わせても不思議ではないのだが。

「よう、花蓮。出掛けるのか？」

「べ、別に司波くんには関係ないでしょ。そっちこそ随分と遅かったんじゃない？」

　まだ放課後の気まずさは継続中のようだ。

「どうせクラスの女子と遊んでたんでしょ？　少しチヤホヤされたからって舞い上がってて、バカみたい」

「舞い上がる？そんなわけなかろう。今日は美濃とクズガスコンビと遊んでたんだ」

　どうやら俺がモテていることに嫉妬をしているようだ。

「え、そうなの？　あ、でも学校ではデレデレしてたくせに」

「そんなことない。そもそもクラスの女子なんて、名前もよく知らないからな」

「クラスメイトの名前も覚えてないの？それはそれで問題だよ」

「問題などない。俺は花蓮さえいればそれでいいからな」

「へ？」

　いつも世話になってる感謝を告げると、花蓮は顔を真っ赤に染めた．

　よく考えれば今のセリフは愛の言葉のように聞こえることに気付いた。

「な、なな何言ってんのよ！もうっ！」

「い、いや違う。そういう意味じゃ……いつも世話になってる感謝の言葉だ」

「わ、分かってるってば……」

　なんだかむず痒い空気が流れる。

　たかが小娘一人に何を翻弄されているんだ。

　俺は誇り高き魔王だぞ。

「こ、これからもよろしくな、花蓮」

「他の女子がお世話してくれるかもよ？」

「俺は花蓮がいいんだ」

「わ、私が？　仕方ないなぁ。まあ面倒見てあげる」

　花蓮はようやく笑顔になり、鼻歌を鳴らしながら去っていった。

　まったく素直じゃない奴だな。

　ま、そこが花蓮の魅力でもあるが。

「『俺には花蓮さえいればそれでいいからな』だって！　キャー！」

「レ、レレイレ!?」

　急に金髪の（ポンコツ）女神レレイレが物陰から現れた。

「み、見ていたのか？」

「たまたまです。シュバイツァーさんに会いに来たら、いきなり青春ドラマ始まっちゃうんですから。びっくりしましたよ」

「か、からかうな！」

「なんだかんだ言ってシュバイツァーさんもこの世界を楽しんでいるじゃないですか」

「楽しんでなんかいるか！　仕方なく生活してるだけだ」

「ふぅーん」

　ニヤニヤするレレイレを睨みつける。

「それより何をしに来たんだ？　もしかして元通りにする方法を思いついたのか？」

「いえ。なにか困ってらっしゃることがあるかなと思いまして」

「なんだ。そんなことか」

「そんなにあからさまにガッカリしないでください。なにかないんですか？　お困りのことでも疑問に思うことでも、なんでもいいんです」

　レレイレは真剣に俺の悩みを聞いてくる。

　ポンコツ気味な女神だけど、人柄はよいようだ。

「そうだな……あ、そうだ。魔法についての疑問なんだが」

「はい。なんでしょう？」

「俺の身体は完璧に司波大我のものなんだろ？」

「そうです」

「それなのに何故か魔法が使えるんだ。ヒーリングと不可視の二つだけだが」

「あー、それは簡単なことです。魔法というのは、そもそも気を練って発動するものなのです。だから気さえ練れれば、この世界の人間でも魔法は出せます」

「ならばなぜ炎や氷などの魔法は使えないんだ？」

「この世界の人間には導魔力が低いからです。導魔力というのは、いわば練った気を放出させる力ですね。それが圧倒的に足りません。だから攻撃魔法など高度なものは出せないんです」

「導魔力というのは鍛えられるのか？」

「うーん……どうでしょう？　魔導力を司るのは脳の中にある器官なので、筋トレみたいに鍛えることは出来ませんね」

　分からないことを教えてくれるといったわりに、随分とあやふやな回答だ。

　やはりこいつはポンコツで間違いない。

「他にはなにか質問がありますか？」　

「いや、いい。どうせなにを訊いても大した回答が得られなさそうだ」　

「失礼ですね！　私は全知全能の女神ですよ。あ、そうだ。女の子が喜ぶプレゼントとかサプライズをお教えしましょうか？　先ほどのツンデレちゃんみたいな女の子は、なかなか難しいですから」

　なにが全知全能だ。

　安っぽいネット記事のようなアドバイスじゃないか。

「そんなことよりレレイレは俺と大我を元に戻す方法を考えていろ」

「あ、思い出した！　それなんですけどね。もしかしたらそのうち可能になるかもしれないんです」

「なんだと!?　それを早く言え！」

「だって忘れてたんですもん」

「いちばん大切なことを忘れるな！」

　叱りながらも気持ちは高ぶっていた。

「実は大我さん、あちらの世界でピンチなんです。本格的に辛くなって、元の世界に戻りたいとか泣き言を言うかもしれません」

「おー、なるほど」

　大我は根性があるタイプには見えない。

　確かにあちらの世界が辛くなれば逃げ出したがる気はした。

「向こうではなにが起きているんだ？」

「魔女王イザベラさんが大暴れして、大変なことになってるんです。いくら魔王の力を持ってるとはいえ、大我さんがそれを使いこなして、更には勇気を振り絞って戦わないと、どうにもなりませんから」

「イザベラが!?それは確かに厳しそうだな。どんな状況なのか、詳しく聞かせてくれ」

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　向こうの世界で大我くんはどうなっているんでしょう？

　次回、大我Sideをお楽しみに！