一位はだあれ

「ねえねえ、また好きな男の子の順位発表しようよ」


 二学期の終業式の日。

 そうじ時間が終わり皆帰って行く。

 明日から短い冬休みだ。

 私たちは教室に残っておしゃべりタイム。


 メグが突然そう言った。

 前に一度発表し合ったことがあって、ものすごく盛り上がった。


「えーまた言うの」

「変わってるかもしんないじゃん」

「言いっこだったらいいか」

「絶対にホントのこと言う?」

「言うよね」

「約束だよ」

「言うから、聞きたい」

「聞きたい聞きたい」

「誰から誰から」

「それは言いだしっぺのメグからでしょ」


 メグがそんなこと言い出すとは思わなかった。

 確かに前回はみんなキャーキャー言って、ドキドキした。


「え?ワタシから」

「ほらほら」

「言って言って」

「うーん、じゃあ言うね。えーと、今は」

「うん、うん」

「一位は、アッキかな」

「えー」

「ホント?」

「テルじゃないの?」


 カコが聞いた。

 うん、私もテルだと思う。


「ハハ、あいつなんてタイショーガイ」

「ホントかなあ?」

「ホントホント、アッキ大人っぽいとこがいい」

「それはそうだね」

「んで、二位がシバケン」


 メグはすぐに続けて言った。

 なんか準備していたみたいに。


「なんか、メグっぽい」

「でしょ、サッカーかっこいいし」

「そうだよね」

「三位はいない。二組の男子こどもだし」

「ハハ」


 メグ、なんかウソっぽいな。

 本当はかわいい性格なのに、無理にキャラ作ってるとこあるし。

 テルの話題になるといつもムキになる。


「じゃ、次、誰」

「メグ指名して」

「ふーん、じゃ、ハナ、言って」

「えー」

「はいはい、ハナ、ほらほら」

「うーん……と」

「一位、誰誰?」

「うーん、タカシくん、かなあ」


 えっ、ハナ、そうなんだ。

 タカシくん……

 ふーん……


「へー、そうなんだ」

「ワタシはそんな気がしてた」

「いろいろやさしいもん」

「いろいろ?」

「うん、いろいろ」


 いろいろってどういう意味だろ。

 確かにタカシくんやさしいと思うけど。

 いろいろってどういう意味?

 気になる。


「二位と三位はわかんない。日によって変わる」

「それわかるー」

「そうそう、変わるよね」

「毎日変わる」


 ハナははっきりものを言う子。

 そこはうらやましい。

 そうか、タカシくんなんだ。


「じゃ、次誰?ハナ、言って」

「ではカコ聞きたーい」

「えー」

「言って言って」

「うーん、絶対男子に言わない?」

「言わないよー」

「絶対言わない」

「うーん、じゃあ……アッキ。あー言っちゃった」

「カコ真っ赤じゃん」

「えー、だってー」


 カコが顔だけじゃなく、首まで真っ赤になった。

 色白だからすごくわかりやすい。


「これは重症だあ」

「ギターもうちょっと上手くなったら、聞かせてやるって言ったもん」

「ホントに!!」

「ずるーい!!」

「ワタシも聞きたい!!」

「多分、みんなにだよ、みんなに」


 カコが必死になっている。


「でー、二位はー、オーケンかな」

「へー」

「背が高いしー、バク転できるし」

「そうそう」

「ワタシも見た。すごいよね」

「カッコいい」

「三位が、ヒロかな」

「ヒロかあ」

「この前、髪引っ張ったから三位に後退」

「男子なんであんなことすんのかな」

「だよね」

「いじわるはダメー」


 カコのことはだいたいわかる。

 前からアッキが一番だもんね。

 でもアッキがそんなこと言ったんだ。

 カコ、それは教えてくれてなかったな。

 かくしてたのかな。


「はいお待たせ。最後はクミさま、どうぞ」

「うーん」

「さあさあ、言って」

「うん」


 ハナがタカシくんって言ったので、わかんなくなった。

 誰だろ、ワタシが好きなのは。


「ねー誰よー」

「うん、じゃあ、えーと、アッキ」

「じゃあ、って何よ?」

「うそっぽーい」

「そんなことないよ。アッキ、アッキだよ」


 アッキは三位までには入ってる。

 それは本当。

 でも一位かな。


「アッキ、みんなも大人っぽくっていいって言ってたでしょ」

「そうだけど」

「じゃあわかった。一位アッキね。二位は?」

「うんと、二位は」

「誰誰?」

「二位は、シバケン」

「シバケン?」

「うん、シバケン」

「いがーい」

「この間ね、図工の時間にね、白の絵の具貸してくれたの。ワタシの白色なくなっちゃって。そしたら、すっと。いいよって。ホントだよ」


 あれ、私、なんかいっぱいしゃべってる。

 弁解してるみたい。


「へー」

「それは、キュンするね」

「じゃあ三位は」

「三位は……」


 タカシくんが三位までに入ってる気がする。

 好きな本も一緒だったし。

 だけど、ハナに先に言われてなんか言いにくい。


「三位は……えと、うん、トシヤくん」

「え、誰?」

「となりんちの。いま中一。二つ上なの。幼なじみ」


 トシヤくんは小さい頃からよく遊んでくれた。

 でも中学に入ってから全然顔を見なくなった。

 バスケ部に入ってがんばってるってママが言ってた。


「年上かあ」

「年上はいいなあ」

「あこがれるよね」


 でもトシヤくんはもう遠くに離れちゃったような気がする。

 だから本当は三人には入っていない。

 それは自分でわかってる。

 だけどそう答えちゃった。


「そろそろ行く?」

「うん、帰ろう帰ろう」

「星のカンサツ会、明後日だよね」

「児童公園ね」

「夜の八時ね」

「夜集まるって初めてだよね」

「そうね、楽しみ」

「ちょっとドキドキ」

「お天気だいじょうぶかな」

「じゃ、明後日ね」

「バイバイ」


 通知表は、算数と音楽が上がってた。

「たいへんよくできました」も三つ増えてた。

 早くママに見せよっと。


 うーんと、でも……本当は、

 ……タカシくん、何位だろ。

 なんか胸がへん。

 モヤモヤする。

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