第19話

 トイレからの帰りに明かりの付いたリビングのドアを開けると、両親が帰って来ていた。


 「おかえり、いつ帰ったの?」


 「9時頃よ。夕食ありがとうね。」


 「ううん、気にしないで。」


 アナザーワールドオンラインでお金を稼げるまでの間は、家に1円も渡せないしね。


 それから両親と少し話をすると、僕は自分の部屋に戻った。


 「ん、メールが来てる。」


 確認すると妹たちからのメールが来ていた。メールの内容は夕食のお礼と2人もアナザーワールドオンラインを始めた事を伝えるメールだった。


 「2人も始めてるんだ。」


 妹の茜と翠の2人はアナザーワールドオンラインのβ版をテストプレイしていた。その為、2人はゲーム内の知り合いたちと一緒にプレイしているのだろう。


 2人へのメールの返事の返信を送ると、僕はコクーンの中に入ってアナザーワールドオンラインを再開させた。


 帰還後すぐに僕はベットに入って睡眠を取って翌日、この日は少し狩場を変えてみた。


 一昨日と昨日の探索していた場所は城砦町ターテレの東門だったが、今回は西門から外に出る。


 西門から外は草原の先に森が広がっており、冒険者ランクの石ランクと水晶ランクの冒険者が狩場にしている場所だ。


 冒険者はランクの1つ上の依頼なら受けられる。だから、僕も石ランクの依頼を受けてからこの場所に来ている。


 ターテレ西に現れる魔物はラビット、キリキリバッタ、ウルフ、スライムの4種類である。


 その内のウルフは戦った事はないが、依頼を受ける前にミリアさんに話した時、ミリアさんから問題はないだろうとお墨付きを受けた。


 街道から外れて草原を進んでいると、早速魔物を発見する。


 「キリキリバッタだな。【マジックボール】発動!【マジックボール】発動!」


 タイミングよく茂みから出て来たキリキリバッタへと【マジックボール】を連続で放つ。


 「よし!」


 ラビット、キリキリバッタ、スライムの3種類の魔物は今までの経験から【マジックボール】を2発命中させれば倒せる魔物だ。


 そうと分かればロッドを向けて、【マジックボール】を2回魔法を発動すれば倒せる為、僕は魔物を発見すればすぐに魔法を放てる様にしながら進んでいる。


 そうして倒したキリキリバッタの解体を行なおうと近付いた時、先ほどキリキリバッタが飛び出て来た茂みからガサガサ音がした。


 警戒してロッドを茂みに向けるが、茂みからは魔物も冒険者も出て来ない。


 音は確実にした。茂みから一歩一歩後退しながら警戒していると、僕が離れている事に気付いたのか、茂みの中から魔物が飛び出して駆け寄って来る。


 「ウルフか!?【マジックボール】発動!【マジックボール】発動!【マジックボール】発動!」


 連続でロッドを向けながら【マジックボール】を放ちまくる。幸い1発目の【マジックボール】の直撃をウルフが受けたから、続けて放たれた2発目と3発目の【マジックボール】が命中してウルフを倒した。


 「ふぅー……音に気が付いて良かった。」


 気が付かなければウルフから奇襲を受けていただろう。汗をかいてはいないけど、額を拭ってしまう。


 ここは茂みに近いからと、僕はウルフの死骸をインベントリに仕舞うと同様にキリキリバッタの死骸も収納してこの場から離れる。


 辺りに茂みのない広めの場所で行動していたラビットを【マジックボール】で倒すと、先ほど倒したラビットと一緒にインベントリに収納したキリキリバッタとウルフを取り出した。


 今回もドロップアイテムが目当てな為、雑に魔物のお腹を解体ナイフで切り裂くと、体内の魔石を引き抜いた。


 「依頼のアイテムだな。」


 ラビットから肉が2つ、キリキリバッタから鋭い脚が2本、ウルフから毛皮が2枚が手に入った。


 3つのアイテムをそれぞれのアイテムを入れる袋の中に入れてインベントリに仕舞うと、僕は草原の探索に戻った。


 「森のところまで言ってみようかな。」


 ターテレ周辺の森は石ランクと水晶ランクの冒険者がメインに探索する場所だ。だけど、今日の依頼を達成すれば僕も石ランクになれる。だから明日の偵察も兼ねて森まで足を運んで行く。


 ターテレ西門を出てから魔物を倒しながら進み、2時間ほどで森の入り口にたどり着いた。


 【プチウォーター】を使って水分補給を取ると、森の近くの草原を歩いて魔物を探して行く。


 そして現れたのはウルフ3匹だ。これまで戦って最高2匹だった。僕はロッドを先頭のウルフに向けて【マジックボール】を放つ。


 「ギャン!!」


 【マジックボール】が命中してウルフが叫ぶと、残りの2匹のウルフが僕に向かって来る。


 冷静に即座に【マジックボール】を接近して来るウルフたちに向かって放ち続ける。


 それでもウルフを全て倒し切れず、ウルフの1匹に接近されてしまった。


 「足狙い!」


 体勢を低くして接近して来たウルフが僕の足を狙って攻撃して来ると判断すると、わざと片足を前に出して囮に使う。


 ウルフはまんまとその囮の足に噛み付こうとした時、囮の足を引いて軸足にして蹴りをウルフに繰り出した。


 足にウルフを蹴った感触を感じながらウルフは宙を舞いながら地面をバウンドする。


 「流石にラビットみたいに遠くまで蹴れないね。」


 それでも5メートルほど蹴り飛ばされたウルフに向かってロッドを向けると、僕はトドメとばかりに【マジックボール】を発動した。


 そうして【マジックボール】の直撃を受けて3匹のウルフを僕は無傷で倒す事に成功するのだった。


 倒したウルフをインベントリを使って一カ所にまとめてから解体し、これで依頼納品用のウルフの毛皮は集め終わった。


 それからも僕は森の近くの草原を進んで魔物を倒し続けて夕方になる前にターテレに帰還した。


 それにしても森の近くの方がウルフとの遭遇率が高かった。森にもウルフの湧く魔素溜まりがあるのだろうと思っていると、僕の順番が来た様だ。


 解体場で受け取った達成のハンコを押された依頼書とギルドカードを出して、受け付けのサーヤさんに渡す。


 「これで連続10回の依頼達成ですね。おめでとうございます。」


 「ありがとう、サーヤさん。」


 「これでアオイくんは石ランクです。水晶ランクを目指して頑張ってくださいね。」


 「はい!」


 石ランクに上がった冒険者ギルドカードと依頼報酬を受け取った僕は受け付けから離れて行った。

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