第18話
1匹目のラビットを倒してから僕は草原を移動しているラビットを狙って移動して行った。
倒したラビットは全て魔石を取り除いてドロップアイテムに変えると、今回の依頼で納品するアイテムにラビットは変わっていく。
そうしてターテレから出て2時間で目標のラビットの肉10個とラビットの毛皮10枚を集め終わった。
これは称号の効果でドロップ率2倍が無ければもっと時間が掛かっただろう。
もう依頼納品分は集まったが、僕は草原の探索をしていく。
「また治癒草みっけ!」
治癒草を採取して袋の中に入れる。そうしていると、近くの茂みからガサガサ音がする。
茂みの方を見ながらロッドを構えていると、その茂みからラビットとは違う魔物が現れた。
出て来たのは水饅頭型の半透明な粘液の魔物スライムだ。このスライムは城砦町ターテレの下水道から逃げ出した個体だろう。
昨日の探索時にミリアさんがこの辺りに出現する魔物の説明をした時に聞いた通りの姿形の魔物だ。
草原に出て来るスライムの攻撃方法は体当たりと貼り付いて溶かしてくる攻撃をして来る。
とにかく攻撃を受けないに越した事のない魔物だ。僕はスライムが何かをする前にロッドの先に念じて【マジックボール】の魔法陣を展開するとすぐに発動した。
放たれた【マジックボール】がスライムに命中すると、スライムは形を変えながら茂みへと吹き飛んで行く。
もう一度【マジックボール】の魔法陣を展開してスライムを待ち受ける。だが、スライムは茂みの方から現れない。
「倒したのかな?」
【マジックボール】がクリティカルヒットしてスライムを倒したのかと、僕は茂みを掻き分けて探してみる。
すると、茂みを進んだ先に形を保てなくなっているスライムを発見した。
「倒せたんだ。んー、どうしよう。」
倒したスライムを見て考える。スライムの素材はスライムの大部分を占めているスライムゼリー、スライムゼリーを包むスライムの皮、スライムの心臓部のスライムコアの3つだ。
その内のスライムコアの中に魔石がある。その為、解体するのならスライムコアの破壊を行ない、ドロップさせるならスライムコアから魔石を取らないといけない。
でも、このドロドロとしたスライムゼリーを掻き分けてスライムコアを取りたくはない。
そんな葛藤を1分ほどした僕はスライムの皮を解体ナイフで切り裂き、切り裂いた部分からドロッと溢れるスライムゼリーに手を突っ込んでスライムコアを引き抜いた。
「うわー、ドロドロして気持ち悪ッ!!」
グジュグジュの柔らかな寒天に絡み付く粘土の高い蜂蜜を混ぜた様なスライムゼリーの中に手を入れた感触は気持ち悪かった。
ドロドロしている中に中途半端に固形の部分があったからそう感じたのかも知れない。
すぐに【ウォッシュ】の魔法を発動してスライムコアを持ったままで、僕は泡立つ水の玉に手を突っ込んだ。
そうして綺麗になった手を拭いてから、一緒に綺麗になったスライムコアの中にある魔石を解体ナイフで砕いた。
魔石が砕かれると、先ほどまでドロドロとしたスライムゼリーを垂れ流していたスライムの死骸は消え去り、そこには透明なラップみたいな物に包まれたスライムゼリーが2つドロップしていた。
このラップの様な物はラビットの肉にも包まれている事からドロップアイテムの中にはそう言う物が多くあるのだろう。
直に地面に落ちていたら、液体なら使えなくなるし、肉なら食べるのに抵抗があるからこうしてドロップしてくれる方がありがたい。
「直接触るのは気持ち悪く感じるのに、なんで1枚遮られるだけで気持ち悪く感じないんだろ?」
スライムゼリーをむにむにしながら、インベントリから取り出したドロップアイテムを入れる袋の中に2つのスライムゼリーを仕舞うと、茂みの外へと向かった。
それからラビット以外にもスライムとキリキリバッタと言う足が鋭いバッタの魔物を倒して進み、僕は開けた茂みが周りにない場所で昼食を食べていく。
道具屋で購入した防水性の布を敷いてその上に座ると、木のコップを取り出して【プチウォーター】の魔法を発動してコップに水を注ぐと、朝に購入した肉がたっぷり挟まれたサンドイッチとを食べて行った。
「美味い!」
甘味としょっぱさがあるタレが肉に絡み合い肉の他に挟まれている野菜とパンに合う、僕の味覚には美味しく感じる味だった。
「魔法で出した水だけどちゃんと飲めるね。変な味もしないし。」
喉をごくごくと鳴らしながらおかわりもしながら水を飲み干して、僕は片付けをしてから昼食後、城砦町ターテレに戻り始めた。
空がオレンジ色になる頃にはターテレにたどり着く。僕はそのまま冒険者ギルドへと向かうと、日暮れの時間帯だからか、丁度ターテレに帰還した多くの冒険者が冒険者ギルド内には居た。
あまりの人混みの多さに嫌な気持ちになりながら、僕は解体場へと足を運ぶと時間が掛かりながらも依頼納品や依頼外のドロップアイテムを売却して冒険者ギルドへと戻る。
列があまりにも長く待つのに退屈しながら僕の番になった。
「アオイくんですか。依頼どうでしたか?」
「達成出来ましたよ、サーヤさん。」
達成のハンコが押された依頼書と冒険者ギルドカードをサーヤさんに渡すと、確認したサーヤさんから依頼の報酬とギルドカードを渡されてお礼を言ってから僕は冒険者ギルドを後にした。
「それにしてもあの時間だと忙しそうだったな。」
あの人数の冒険者を捌くのは一苦労だろう。そんな事を思いながら金のウサギ亭に帰った僕は、泊まっている部屋に帰ると防具をインベントリに仕舞ってから夕食を食べに向かった。
夕食後、部屋に戻ると防具の整備と着ている服を洗って干してから、僕の全身を【ウォッシュ】の魔法で綺麗に洗いタオルで水気を取るとワンピースを着てから幸運の女神ティア様へと祈りを捧げた。
「アオイくん!こんばんわ!」
「はい、こんばんわ。ティア様。」
それから僕はティア様と会話をしていく。ティア様は時々気持ち悪くなるが、気持ち悪くなった時に声を掛ければ元に戻るが少し疲れてしまう。
そんなティア様との会話を終えると、寝る前にログアウトしてコクーン内で目を覚ます。
「うっ、トイレ!!」
急にトイレに行きたくなった僕は急いで自室からトイレへと向かった。
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