第17話

 「ん、ん〜……ふぁ〜はふぅ……んーよく寝た。ゲームの中だけどしっかり睡眠取れたみたいだ。」


 あくびをしながら背を伸ばした僕は起き上がってベットから降りると、昨日洗濯した装備アイテムや下着が乾いているのかを確認しに向かう。


 「うん。ちゃんと乾いてるね。魔法で洗ったから乾きが良いのかな?」


 乾いている事を確認すると、ワンピースを脱ぎ捨て全裸になった僕は【ウォッシュ】の魔法を発動して全身を洗っていく。


 魔法陣から出て来た泡がいっぱいの水の塊を身体に触れさせて洗い、全身を洗い終わりサッパリした僕はインベントリからタオルを取り出して身体に付着した水分を取って行った。


 「不思議な感じだったな。タオルはここに干してっと……よし!ごはん食べに行こっと!」


 【ウォッシュ】で身体を洗う不思議な感触を思い出しながらタオルを干すと、僕は乾いている下着や装備アイテムを着込み、朝食を食べに食堂へと向かった。


 「おはようございます。朝食食べられます?」


 「おはよう。朝食なら準備出来るよ!すぐに持って来るね!」


 「お願いします。テトさん。」


 金のウサギ亭の女将テトさんが朝食を持って来るまでの間、僕は今日の予定を考えようと思っていたが、すぐにテトさんは朝食を持って来てくれた。


 「お待たせ。今日の朝食はサンドイッチとスープだよ。たんと食べな!」


 「はい!いただきます!」


 早速手前のサンドイッチを手に取り齧り付く。トーストされてサクッとしたパンの感触を感じながらハムとチーズ、レタスの様な野菜を噛み切り、口を動かしていく。


 「うん、美味い!」


 口に含んだサンドイッチを飲み込み、次はスープをスプーンで掬って口に入れる。スープは昨日のスープと同じだが、昨日よりも煮詰まったのか味が濃くなっていた。


 サンドイッチとスープを食べて行き、最後に薬草茶を飲み干し、僕は手を合わせて「ごちそうさま」と言うと、テトさんに食べ終わった事を伝えて部屋に戻った。


 部屋に戻ると、昨日買った防具をインベントリから取り出して身に着けて部屋を出る。


 「テトさん。今日も泊まりたいんだけど大丈夫かな?」


 「問題ないよ。部屋はそのままで良いかい?」


 「うん、そのままで良いよ。これ、銀貨。」


 テトさんに宿代の銀貨を渡して今日も泊まれる様にすると、テトさんに「行って来ます」と言って僕は金のウサギ亭を後にした。


 冒険者ギルドに向かいながら道すがら露店で売られているウサギ肉だろう肉がぎっしり詰まったサンドイッチを購入してインベントリに仕舞うと、そのまま冒険者ギルドへと歩いて行く。


 「結構混んでるな。依頼ボードも見れそうにないし。受け付けも並び過ぎだ。」


 冒険者ギルドは数多くの冒険者が依頼ボードの前で依頼書を選んでおり、依頼書を取った者は受け付けへと向かい、その受け付けも列が出来ている。


 あの人混みの中に入るのは得策じゃないと思った僕は人混みが収まるまで待とうとした時、軽薄そうな冒険者が僕の方に向かって来た。


 「ねぇ、君。見た事ないけど新人さんかな?俺は水晶ランクの冒険者なんだけど。俺と一緒に依頼に行かないかい?」


 「いえ、行きません。1人で充分なので結構です。」


 こう言う手合いはきっぱりと断らないと粘着される可能性が高い。現実でも似た様な奴に粘着されたし。


 「そんな事言わずにさ。1人じゃ危ないよ。俺なら君を守ってみせる!」


 笑顔で言われるが、その顔の下には下卑た下心があるのが分かるほどだ。これは関わったら、こっちが損をする奴だと判断する。


 それからあまりにもしつこいやり取りが行なわれるが、ミリアさんが現れたタイミングでナンパ野郎は逃げ出して行く。


 「災難だったね、アオイくん。」


 「本当だよ。朝から気分が悪い。こっちが断ったんだからさっさと消えれば良いのにさ。」


 「本当にそう思うよ。これからも、ああ言う奴は現れるから気を付けるんだよ。」


 「うん、分かってる。」


 まだ依頼ボードには冒険者が群がっているから向かえず、収まるまでの間、僕はミリアさんと話をして過ごす。


 その話をしている間にさっきのナンパ野郎の話も出て来た。ナンパ野郎の名前はバン。色々な新人冒険者の少女をナンパしているクソ野郎なのだそうだ。


 そしてナンパした新人冒険者は時間が経つに連れて行方不明になるそうで、バンはヤクザや裏の人間と繋がっていると言う噂があると注意される。


 「そんな噂が立ってるのに冒険者ギルドや領主は何もしてないの?」


 「それが問題なのよ。噂はあるのよ。でも実際の証拠がないから動けないの。だから、アオイくんも注意してね。」


 「うん。」


 あんな軽薄そうな男が物騒な噂が立つだけで証拠がないなんてね。そう言う事に関して優秀なのか、それともバンの裏にヤバい奴が居るのか分からないな。本当に要注意人物だ。


 ミリアさんと話している間に依頼ボードの周りの冒険者の数が少なくなり、僕はミリアさんと別れると、依頼ボードの前に移動して行く。


 「ラビットの肉。それもドロップアイテムでか。数は最低5個。それなら毛皮の依頼も受けるかな。」


 ラビットのドロップアイテムであるラビットの肉とラビットの毛皮を納品する依頼書を取ると、下級冒険者の受け付けに向かった。


 昨日は冒険者登録と依頼登録の受け付けに居たサーヤさんだったが、今日は下級冒険者の受け付けに居る様だ。


 「サーヤさん、おはよう。この依頼をお願い。」


 「おはようございます、アオイくん。ドロップアイテムの依頼か。確実にドロップする訳じゃないから頑張ってね。」


 「はい。ラビットをたくさん倒せば手に入るから頑張るよ。」


 依頼書の手続きを行なって行き、依頼を受領すると、受領した依頼書を受け取った。


 依頼書をインベントリに収納すると、僕は先ほどまで喋っていたミリアさんに挨拶してから冒険者ギルドを後にする。


 冒険者ギルドを出た僕は何事もなくターテレの門へとたどり着くと、門兵に冒険者ギルドカードを見せて城砦町ターテレの外に出た。


 少しの間だけ街道を歩いて進んだ僕は途中で草原へと足を踏み入れる。


 草原を進んで数分経ち、茂みを出て草原を移動している真っ白なウサギの魔物であるラビットを発見する。


 「早速一匹目!!」


 【マジックボール】と念じて魔法陣をロッドの前に展開すると、ラビットに向けて発動と念じて【マジックボール】を放った。

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