第16話
基本的な文字の読み書きを称号や加護の効果の影響なのか、凄い速さで学習して行き、このまま2、3日勉強を行なえば、完全に覚える事が出来そうなのが怖かった。
「すぅー良い匂いがして来た。もう夕食の時間かな?」
勉強道具をまとめて袋に入れると、僕はインベントリの中にまとめた袋を入れる。こうする事でインベントリの枠を節約する事が出来るのだ。
部屋の鍵を閉めた僕は食堂へと向かうと、夕食の時間になっているのか、まだ少ないがお客さんが食事を食べていた。
「あっ、テトさん。夕食の時間だよ。」
「ああ、そうだよ。準備するかい?」
「お願いします。」
テトさんに席を案内されて座ると、夕食の食事が来るのを待ち、少ししてからお盆を持って料理を持って来る子供の姿があった。
「夕食お持ちしました!」
「ありがとう。」
テーブルに並べられて行くのはパンとクリームシチューにサラダと飲み物は薬草茶だ。
「いただきます。」
パンを触ると温かく千切るとパリッとしていて出す前にトーストしたのだろう。千切ったパンをクリームシチューに付けて口に入れる。
小麦の匂いとクリームシチューの濃厚な味が口の中に広がっていく。
「美味い!」
次にサラダをフォークで食べる。新鮮でシャキシャキしている。だが、サラダはサラダだった。
「ん?これ、なんの肉だろ?」
「それはウサギ肉ですよ。ラビットから取れる肉なんですけど、ウチはドロップの肉を使っているんです。だから美味しいんですよ。」
「へぇ、そうなんだ。それで君は?」
「僕はカラです。母さんから聞いてます。新しく泊まるお客様ですよね。」
テトさんの子供か。金のウサギ亭は家族経営だってミリアさんがそう言えば言っていたな。
「そうなんだ。僕はアオイ。よろしくね。」
笑顔で自己紹介をすると、カラくんは顔を真っ赤にしていた。これは僕に惚れたな。これ、僕が男だって知らせないと大変な事になりそうだ。
「それと僕は男だからね。」
「えっ?えぇええええ!!!!!!!!」
「カラ!!騒がしいよ!!!」
カラくんが叫んだせいで視線がこのテーブルに集中する。そして騒がしくした結果、テトさんがやってきた。
大声を出したカラくんの頭に拳骨を落としたテトさんは、僕に何があったのかを聞いてくる。
「僕の性別を教えたら、驚いたみたいで。」
「ああ!それは驚くね。私も驚いたぐらいだもの。」
カラくんが驚いた大声を出した原因を知って納得したのかテトさんは頷いていた。
テトさんはカラくんを連れて行き、僕はそれから夕食を堪能した。
夕食後、僕は部屋に戻ると鍵を閉めて服を脱いでいく。そして【ウォッシュ】の魔法を発動すると、泡を含んだ水の玉が魔法陣から現れる。
「この中に服を入れれば良いのかな?」
先ほどまで身に着けて服や装備アイテムを【ウォッシュ】の泡水の中に入れて行き、綺麗になると取り出していく。
「流石に乾くまではいかないみたいだね。」
濡れている装備アイテムを一旦インベントリに仕舞うと、僕は道具屋で購入した洗濯物を干す道具の準備をすると、インベントリに仕舞った装備アイテムや服を干していく。
「ここも再現してるんだな。今のサイズは普通の僕のサイズと同じみたいだ。」
ショーツを脱いでインベントリから取り出したワンピースを着ると、さっき脱いだショーツを【ウォッシュ】の中に入れて洗って行った。
裸ワンピース状態の僕はそれから眠るまでの間、薄ぼんやりとした明かりのなか、ベットに横になり、メニューを操作してログアウトすると、意識がすうっと抜けて行く。
次に目を覚ましたのはコクーンの中だった。僕は被っていたヘルメットを脱ぐと、コクーンの蓋を開けて外に出る。
コクーンから外に出た僕は夕食を作りに台所へと向かう。
「まだ帰って来てないみたいだね。夕食の準備だけしておこ。」
それからの僕は自分の分と仕事に出かけた両親、大学生の妹たちの分の夕食を作り、帰って来る前に夕食を食べて片付けをし、シャワーを浴びてすぐに自室へと戻る。
シャツに短パンとラフな格好でコクーンの中に入ると、アナザーワールドオンラインを起動させた。
ログアウトしてからこっちの時間は4倍速で時間が進む為、それなりの時間が経っている。
「さてと、寝る前に今日取得した称号の確認だけしておこう。」
ステータスを開いて確認して称号を確認する。
【見習い冒険者】
冒険者に登録した証
能力補正(微)能力成長補正(微)冒険者系技術取得補正(微)冒険者系技術習熟補正(微)
【天賦の才能】
天から与えられた才能がある証
能力補正(特大)能力成長補正(特大)技術取得補正(特大)技術習熟補正(特大)
冒険者系技術取得補正
冒険者関系の新しい技術の取得に補正が掛かる
冒険者系技術習熟補正
冒険者関系の取得した技術の習熟に補正が掛かる
【見習い冒険者】は冒険者になったからか。誰でも取得できる称号なんだろうな。
それで【天賦の才能】これは僕の称号効果が高いから取得出来た称号だね。この称号で更に学習効率が上がりそうだ。
良い称号を取得出来たと納得すると、僕はステータスを閉じ様としてレベルの項目に目が入る。
「称号が手に入ったし、レベルアップするかな?確かめてみるか。」
首に掛けている幸運の女神ティアの信徒証を手に持つと、僕は祈りを捧げた。すると、何処からともなく声が聞こえてくる。
「アオイくん!やっと祈ってくれたんだね!!待ちくたびれちゃったよ!!!」
テンションの高い声が突如して祈りを止めて辺りを見回してしまうが、部屋の中には僕しか居ない。
それにあの声はチュートリアルを手伝ってくれた幸運の女神であるティア様の声だろう。
もう一度祈りを捧げると、また声が聞こえてきた。
「お、驚かせてごめんね。」
「ううん、いいよ。それでなんでティア様の声が聞こえて来るの?」
「信徒証を使って祈れば私に届くからね。アオイちゃんが祈ってくれれば私に届くの!」
そんな1人の信者を贔屓して良いのかと思うが良いのだろう。たぶん。
「そ、そうなんだ。あのさ、僕はレベルアップ出来るのかな?」
「出来てないよ。流石にレベル3に上がるのに激レアな称号でも1つだけじゃ無理かな。」
「そっか。じゃあ僕寝るから祈るの終わるね。」
「えっ!もうなの?」
「うん、おやすみ。」
「おやすみなさい……はぁ、まだお話ししたかったなぁ。」
祈りを止めると、僕はベットに横になり目を閉じると、眠りますか?と文字がウインドウに現れ、【はい】を選択するとすぐに意識がなくなって行った。
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