第15話
書店から出た僕は、ミリアさんに案内されてミリアさんオススメの宿屋へとたどり着いた。
「ここが私のオススメの宿屋金のウサギ亭よ。私も冒険者時代はお世話になったのよ。さ、入るわよ。」
ミリアさんは金のウサギ亭の扉を開けて中に入って行く。僕はその背後を付いて中に入ると、良い匂いが漂って来た。見回すと、昼食時だからか多くのお客が食事をしている。ここは宿屋だけじゃなく飲食店でもあるのだろう。
「いらっしゃい!2名様だね!!」
「テトさん、久しぶり!忙しそうだけど、宿のチェックインって出来る?」
「出来るよ!でも、あんた家があるだろ?それとも、その背後の子かい?」
「ええ、そうです。アオイくん。この人が金のウサギ亭の女将のテトさんよ。テトさん。この子が新人冒険者のアオイくん。宿を紹介したの。」
「よろしくお願いします。」
女将のテトと呼ばれた大柄な女性に頭を下げる。
「はい!よろしくね。それで何日泊まるんだい?朝食夕食込みで一泊銀貨1枚だよ!」
「一泊分お願いします。」
インベントリからお金の入った袋を取り出して銀貨1枚払うと、テトさんから部屋の鍵を受け取った。
「テトさん。部屋には私がしておくわ。」
「いや、あんた。」
「いいから、いいから。ほら、テトさん。呼んでるわよ。」
給仕に戻ったテトさんを見送ると、ミリアさんが部屋に案内してくれる。その際に自身が部屋を使っていた時のルールを教えてくれた。
そして鍵の番号の部屋に着くと、鍵を使って中へと入る。部屋の中はテーブルと椅子が一組ずつとベットにクローゼットが1つの部屋だった。
「それにしても異世界人は寝泊まりしないと思ってたわ。だから、案内してって言われた時は驚いた。」
「いつこっちに迎えるか分からない人が居るから推奨されてないみたい。こっちで眠っても良いからね。」
アナザーワールドオンラインの不思議な事の1つであるゲーム内で眠ると、現実でもゲーム内と同じくらいの時間の睡眠が取れる効果がある謎の技術があるそうだ。
それが本当なのかは、これから確かめる人が出て来て分かる事だけど、本当にこのゲームは謎な事が多くある。
「それでさ、予算は銀貨8枚なんだけど防具や冒険者道具を買いたいんだ。それも案内お願いしても良いかな?」
「構わないわ。元々そうするつもりだったからね。それじゃあこれから行きましょうか。」
「うん!」
良かった。1人で防具や道具を探して失敗したくなかったしね。でも、ミリアさんはどうして親切にしてくれるのかな?僕を狙っている感じはしないし。聞いてみるかな。
「でもさ、なんでここまで親切にしてくれるの?講習を受けた人みんなにしてる訳じゃないよね?」
「ん〜そうね。アオイくんが可愛かったからかな。アオイくんみたいな子は狙われるからね。だから、教えられる事は教えておこうと思ってね。」
最初はこの人も隠しているだけで僕を狙っているのかと疑ったが、どうやら違う様で安心した。これからは信用できる人リストの1人に入れておこう。
「それじゃあ行きましょうか。」
「うん。まずは防具からお願いね!」
金のウサギ亭を出た僕とミリアさんは防具屋に向かった。防具屋までの間に道具屋があり、金のウサギ亭の帰り道に訪れる予定だ。
そうして防具屋に入ると、ミリアさんは真っ直ぐに受け付けの店員の元へと向かう。
「ビリーさん、久しぶり!」
「ミリアか!久しぶりだな!それでなんの様だ?」
「この子の防具を買いに来たのよ!予算は銀貨8枚ね!あと、アオイくんは魔法使いを目指すそうよ!」
「魔法使いね。嬢ちゃん、こっち来い。」
ビリーと呼ばれた男性に僕が女だと間違われてしまう。それを訂正する前にミリアさんが訂正してくれた。
「マジか!本当に男なのか!?」
「僕は男だよ。それで僕に合う防具は買えるかな?」
「あー問題ない。魔法使いでも、それで冒険に出るのは危ないだろうからな。今から持って来るから、そこに座っとけ。」
ビリーさんが受け付けから離れて置くへと向かって行くの見送ると、僕は店内に飾られた防具を眺めていく。
どれも素人ながら良い防具だと思える物が展示されている。でも、値段を見るとそれなりにするので防具を買うにもお金が必要だ。
そうして待っていると、ビリーさんが革の胸当てと足当てを持って来てくれた。
「予算で言ったら、これが良い。足元や胸部は守れるからな。試着して確認するぞ。付いて来い。」
「うん!」
ビリーさんの後をミリアさんと一緒に付いて行き、1人で試着してみる。が、少し大きかった。
それを伝えると、これよりも少し小さなサイズの同じ防具を持って来てくれ。それを試着するとピッタリだった。
銀貨を払って購入すると、次は冒険者用の道具を買いに向かった。
道具屋に入ると店主のマリーサさんをミリアさんに紹介される。そしてそこから冒険者に必要な道具の購入が始まった。
ミリアさんに教えて貰いながら購入する物を集めていると、紙とペンが視界に入る。これは何に使うのかを聞けば、どうやら森の中やダンジョンで地図を作るのに使うらしい。
「冒険者ギルドでも簡易地図は売られてるからね。あまり購入してくれる人がいない商品なの。アオイくん、買わない?安くするわ!」
「うーん、(文字を書く練習に使えるかな?)安くしてくれるなら買おうかな。」
「ほんと!ありがとう、助かるわ!」
そうして道具屋での買い物を終えて買った物はインベントリに仕舞うと、僕とミリアさんは金のウサギ亭へと向かった。
「ここでお別れね。また明日ね、アオイくん。」
「うん、ミリアさん。また明日!」
金のウサギ亭の前でミリアさんと別れると、僕は扉を開けて金のウサギ亭の中に入っていく。
「いらっしゃい!アオイくんだったね。おかえりなさい。」
「ただいま!テトさんでいい?」
「構わないよ!宿の使い方はミリアから聞いたかい?」
「聞いたよ。」
ミリアさんから教えられた事をテトさんに伝えると、それであっていると言われた。
「じゃあ僕は部屋に行くね!」
「そうかい。夕食の時間は間違えない様にね。」
「はい!」
自身のこれから泊まる事になる部屋へと向かい鍵を使って中に入ると一息吐く。
「んーー疲れた!!けど、これから勉強だー!!」
テーブルに冒険者ギルドで貰ったこの世界の文字の読み書き用の冊子や道具屋で購入した勉強道具を取り出して勉強を始めた。
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