第14話

 「ミリア、その子は講習なの?」


 「そうよ。結構な数のラビットが出たのよ。アオイくん、依頼書とギルドカードを渡して。」


 「うん、はい。」


 治癒草、魔癒草、ラビットの肉の3つの達成済みの依頼書と冒険者ギルドカードを受付嬢に渡す。


 「本当ね。1人で倒したの?」


 「うん、僕は魔法も使えるからね!」


 「本当だよ。教えはしたけど、解体も全部1人だった。」


 ミリアさんも言うと、受付嬢は「へー」と納得してから目付きが変わった気がする。


 「あっ、アオイくん。気を付けろよ。コイツは男だろうが女だろうが優秀な新人冒険者を狙う女だからな。」


 「なっ、なんて事を言うの!?」


 「本当だろう?ニーニャ。」


 その話が本当なら、このゲームで2人目?の変態だろう女だ。ミリアさんの言う通りに気を付けておいた方が良いだろう。ラビットを倒した事を話した時に目付きが変わった様な気がしたし。


 「もう!警戒されちゃったじゃないのよ。はぁ、仕方ないか。それにしてもアオイくんなのね。アオイちゃんじゃなくて。」


 「驚きだろう?アオイくんは男の子なんだもんな。」


 「ええ、そうね。ギルドカードとこれが依頼の報酬ね。確認して。」


 受付カウンターに出された冒険者ギルドカードと依頼の報酬を確認すると、両方ともインベントリの中へ仕舞った。


 ニーニャに軽く手を振られて手を振り返すと、僕はミリアさんに連れられてサーヤさんの居る受付へと向かい、そこで講習終了の手続きを終わらせる事になる。


 「これで講習は終わりよ。サーヤ、仕事終わりそう?」


 「ええ、終わります。今日は昼も担当しますから、早めにお昼を済ませますから。」


 「アオイくん。それなら私たちと一緒にお昼はどう?美味しいお店を教えられるわ。」


 「うん、僕もお腹空いたからいいよ。」


 ゲーム内だけど、このゲームは空腹もキチンとあるからな。お昼は適当な場所を探そうと思ったけど、美味しいところを教えてくれるなら、それに越した事はないもんね。


 それからサーヤさんの準備が終わるまでの間、僕はミリアさんから冒険者としてのコツや工夫を聞いて過ごし、準備を終えたサーヤさんとミリアさんの3人でお昼ごはんを食べに向かった。


 そしてたどり着いたお店は大衆食堂の様だ。まだ開店したばかりの様で、店内には客が少ない。


 そんな店内のテーブル席の1つに3人で座ると、店員がやって来て、その店員に今日のオススメをミリアさんが3人分頼んだ。


 「ここはね、一食の量が多くて美味しいのよ。私も冒険者時代には良く来ていたわ。今も身体を動かした後には来るんだけどね。」


 「私には少し量が多いんですよね。アオイくん、良かったら貰ってください。」


 「うん、いいよ。僕もお腹空いてるから一杯食べられそうだし。」


 それから料理が来るまでの間、サーヤさんとミリアさんと城砦町ターテレの事やターテレ周囲の魔物や草原に森の話を聞いて過ごしていると、3食分の料理が運ばれてきた。


 「お待たせしました。今日のオススメ定食です。」


 並べられた定食は野菜たっぷりのスープ、何かの肉のステーキ、大きなサイズのパンが1つに飲み物は緑茶の様な色をした物だ。


 並べられると昼食を食べ始めるが、その前の「いただきます」の挨拶に疑問を持たれてしまい、食事中に説明をする事になる。


 「こっちで言うところの神への祈りみたいなものなのね。」


 「そう、なのか?食べ物や作ってくれた人への感謝?みたいなものだと思う。昔からそうだったから、分からないけど。」


 食事中に判明したラビットの肉のステーキを食べながら、この美味しいのがあのラビットなのかと思うと、今度遭遇した時にステーキに見えてくるかも知れない。


 スッキリとした味わいの治癒草を加工して作られた薬草茶を最後に飲み干して、満足する昼食を終えるのだった。


 それからサーヤさんとは冒険者ギルドで分かれる事になったが、僕はミリアさんに連れられて魔導書が売られている書店に案内されていた。


 「本当に魔導書は高いから攻撃魔法の魔導書は特に買えないと思うよ。」


 「それでもどれくらいの値段なのかは確認したいし。欲しい魔導書を買う為にお金を集められるでしょ?」


 「まあ、目標があるのは良い事かもね。惰性でやるよりも……着いたよ、ここがその書店だよ。」


 書店に入ると、沢山の本があるからか、独特の匂いが書店内ではしていた。


 「いらっしゃい。」


 入店した僕たちを出迎えた店員か店長は、こちらを一瞥する事もしないで読んでいる本から目を離さない。


 それを見て本当にここは大丈夫なのかと不安になるが、ミリアさんに呼ばれて向かう。


 「ここが魔導書が集まった場所よ。」


 「いっぱいあるね!」


 魔導書コーナーと言えるほどに数多くの魔導書が置かれている。どれも紐付けされた値札が付けられていた。


 一番安い銀貨1枚の魔導書はプチウィンドと言う魔導書で、高い魔法書はフレイムバーストと言う金貨10枚の魔導書だ。


 その中で幾つか安い魔導書なら買える。だけど、まだ魔導書を読む事も出来ない為、どの魔法の魔導書をお金を貯めて購入しようかを考えていると、ミリアさんが一つの魔導書を指差して言う。


 「この魔法は魔法使いじゃなくても欲しい魔法だよ。下級冒険者の依頼で倒す魔物なら索敵出来るからね。」


 下級魔物索敵と言う魔法の魔導書をミリアさんはオススメしてくれた。確かに魔物を探すのに使える魔法だ。


 下級魔物索敵の魔導書の近くには、他にも似た様な獣索敵魔法など索敵系魔法や似た様な効果の探知系魔法の魔導書もあった。


 「銀貨50枚は結構するね。」


 「装備も整えたりしないといけないものね。それでも頑張りなさい。」


 「はい。あっ、そう言えば魔法の書や技の書は売られてないの?」


 「その2つはほとんど売られていないわ。販売しているか、聞いてみる?」


 「ううん、いいよ。売られていても買えないだろうし。」


 「最低でも金貨はするからね。ダンジョンの宝箱かよっぽど運良く魔物からのドロップで手に入れるしかないもの。」


 最低金貨が必要な代物を最低1つはプレイヤーは手に入れられるんだからなぁ。


 魔導書コーナーを最後に眺めてから、僕とミリアさんは書店を後にした。


 そして次に向かうのはミリアさんからオススメされた宿屋だ。

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